この報告には、これまで国土交通省が示してきた内容と異なる事実がいくつも指摘されています。
① 沿川整備基本構想に基づき、計画的に整備を進めていくとされながら、利根川では構想そのものを策定していない。
② 基本構想に基づき、沿川市街地整備計画を策定するとされながら、6河川とも策定なし。
③ 自治体や関係者等から正確な理解と協力を得るため、作成することとされている地区別事業計画書を作成していたのは、工事に着手した127地区中、淀川の1地区のみ。
④ 原則、用地買収を行わずに推進するはずが、用地買収をし、盛土を行っている箇所が、127地区中35地区に及んでいる。
これら内容について会計検査院は、具体的に地区ごとの数字を列挙した上で、「当初想定していた、基本構想に基づく河川と都市の連携や、まちづくり事業との共同事業により実施するという事業スキームは十分に機能していない」とし、「今後、本事業を廃止しない場合には、実現可能性のある事業スキームを構築する必要があると認められる」と総括しています。「事業を廃止しない場合には」との文言からは、「当然廃止すべきだが」との思料が読み取れます。
すでに大きく報道されたとおり、国交省が5.8%としていた6河川の整備率は、会計検査院によればわずか1.1%に過ぎませんでした。河川別では、江戸川の整備率7.4%に対し、会計検査の結果1.8%。荒川同6.5%に対し0.1%。この差異は、国交省が、当該地区において一か所でも完成した延長があれば「完成」に分類していたためです。
この事実に対し、「河川改修事業において、暫定完成及び事業中のものも含めて整備率を算出しているのはスーパー堤防事業のみ」と指摘。「暫定完成や事業中においては、破堤しないという効果は発現しない」と言い切っています。
憲法90条に規定された機関で、内閣に対し独立した地位を持つ会計検査院。その検査権限は国会や最高裁判所にも及びます。この会計検査院が報告した事実及び所見と、国交省の自己評価。継続か廃止か、その判断をするにあたり、いずれがより尊重されるべきものかは自明です。