スーパー堤防事業、問われる江戸川区の説明責任

時と場所で変わる説明

裁判後の報告集会では、小島弁護団長からの丁寧な説明や会場との質疑、地質学者・渡邉拓美さんの、緻密なデータに基づく説明など。(弁護士会館)
裁判後の報告集会では、小島弁護団長からの丁寧な説明や会場との質疑、地質学者・渡邉拓美さんの、緻密なデータに基づく説明など。(弁護士会館)
 17日午後2時から、江戸川区スーパー堤防事業取消訴訟第三回口頭弁論が東京地方裁判所大法廷103号で行われました。

 江戸川区の答弁書に書かれていることが、議会答弁や住民説明と全く異なることはすでにお伝えしてきましたが、その後出されていた被告側の準備書面(1)においても、「本件都市計画が国のスーパー堤防事業との共同実施を前提としていた事実はない」との記述が。これまで区民にはさんざん、国との共同事業である旨説明しておきながら・・。とにかく、スーパー堤防事業を認否せず、通常の区画整理事業として扱うことで、最大の争点をスルーしたい、その一心のようです。

 今回の口頭弁論では、前回、裁判所から原告団になされた釈明(質問)、「事業計画決定は違法、との根拠条文は何か?」に対し、弁護団が答える形で進行。都市計画法2条、同13条1項但書、同13条1項12号、憲法13条、同29条1項、政策評価法3条1項、地方自治法2条14項、江戸川区行政評価実施要綱が挙げられました。この中で、3回目にして初めて被告弁護団が口頭弁論。「(原告弁護団は)事実上と法律上を混同している」と。法律は国民生活のルールを定めたもの。法に則った事実なのでは? 事実と法律は違って当然、と言わんばかりの陳述に唖然としました。

 前述のとおり「共同実施を前提としていた事実はない」としながら、準備書面(1)ではさらに、「本件事業計画決定に基づいて盛り土整備を行うに当たっては、スーパー堤防事業と共同実施する際には、国においてスーパー堤防整備における基準を満たす盛土整備を行うものであるが」とし、区議会では終始一貫否定してきた区としての盛り土造成について、自らこう述べています。「スーパー堤防事業と共同実施せずに区単独で盛土整備を行う場合においても、本件地区が河川堤防に近接することを考慮し、宅地としての安全性のみならず、洗掘破壊や浸透破壊といった河川特有の項目についても配慮して、河川管理者である国とも協議の上、スーパー堤防事業における盛り土整備に準じた施工方法を検討している」と。

 一方、区が現在進めている本件事業に関する土地区画整理審議会において、区民委員より「区(単独)の盛土造成計画の設計内容及び設計スケジュールは?」と聞かれ、「本件はスーパー堤防事業との共同事業整備を目指しており、現時点で区における詳細設計は行っていない」と回答しています。

 盛土に関し、あるときは共同事業、あるときは区単独事業。あるときは検討していて、あるときは行っていない—。時と相手によって回答を変えていることは明らかです。区が無理を押し通したことによる顛末。辻褄を合わせることはもはや不可能で、その場しのぎの、なりふり構わぬ応戦と言えます。区民、議会、そして司法をも翻弄するかのような区当局の姿勢は大いに問われなければなりません。