「事業仕分け」という行政評価によって、公共事業にまつわる癒着やしがらみとは無縁の政治家・民間人らから「スーパー無駄遣い」としてバッサリと斬られた本事業が、彼らの対極にある?官僚と有識者によって甦るとあって、全国で唯一、自治体として「スーパー堤防整備方針」なるものを持つ江戸川区は、区のHPに、来年度は予算化される、とまで早々と掲載しています。このとりまとめを受けて、国土交通省がこれから検討に入るという局面のはずですが、この自信は、それだけ本事業に執着している自治体が他にない、という証左でもある?
抜本的見直しの内容は、人口と資産の集中する首都圏と近畿圏の5水系6河川、全長873㎞の整備はきっぱり諦め、1〜2割に縮小するというもの。その他の沿川は越水には耐えられないけれど、浸透・浸食等に対応しうる堤防強化対策を講じると。つまり8〜9割は、通常の堤防強化にしましょうと。ではどこがその1〜2割に該当する整備区間か?それは、「例えば、ゼロメートル(海面下)地帯や密集した市街地で浸水深の大きい地域を防護する区間」(とりまとめP3参照)なのだそう。このあたりで、必要十分条件を満たす対象自治体といえば、葛飾区とか江東区も。しかし、これらの自治体に、本事業を前提としたまちづくり計画はありません。
対象河川のひとつ、江戸川沿川について、国と具体的な事業交渉をしている自治体は江戸川区だけ、とは江戸川河川事務所の回答。前述の整備方針をつくり、区行政に関わる御仁が2名も検討会委員として出席、こうした見直し検討会が持たれているさなか、「国が本事業を行わなければ区が単独で盛り土する」という協定書を秘密裏に国と交わし(のちに情報開示請求により開示)、これを盾に、東京都に本事業を前提とした北小岩1丁目東部区画整理事業を認可させる、というウルトラCに打って出てまで推進する江戸川区。でも本区の急所は、江戸川より荒川であることは共通認識。(注:区内の荒川沿川で一箇所実施中のスーパー堤防事業は、国と都の共同によるもの)
そもそも、全川つながってこそ価値のある「スーパー堤防事業」だったのでは? ダムが点、堤防が線なら、本事業は面をカバーする、まさに高規格の治水事業であったはず、理屈上。それが、1〜2割しか実施しないのであれば、もはや点に過ぎず、それでも「スーパー堤防事業」と言えるのか? 百歩譲って1〜2割の実施であるなら、治水上極めて脆弱で、どこよりも緊急性が高いところが選ばれて然るべき。
それが、区内でも地盤が高く、国が液状化対応も必要ないと判断、過去一度の決壊もなく、200mもの河川敷を誇り、連結ブロックの埋め込みや緩傾斜堤防事業など、連綿と堤防強化が行われ、規模も強度も第一級として国の折り紙付きの立派な堤防を持つ北小岩が、なぜ該当するのか? しかも当地は江戸川最下流域の東西160m、南北120m、1.4haの区画。家屋は70軒ほどで、居住者255人。この狭小な土地をスーパー堤防化したら、隣接地域は逆に今より危険になるのでは? 区間を厳選し、多くの人命を守るための高規格化なら、もっと上流でふさわしいところがあるのでは?
とりまとめには「人命を守ることを最優先に提案したが、・・すでに調整が進捗している区域については、・・共同事業者にも配慮し、適切に対応することが必要」(P5)、「まちづくりサイド(区)にインセンティブとなるよう・・」(P4)との記述が。
これってもう、表題を「江戸川区のための高規格堤防整備の抜本的見直しについて」に改めたら?とも思いますが、でも一点、「新たに堤防用地を買収することなく盛り土を行うことにより、良好な市街地、住環境が形成されることになる」(P2)という事業の基本を示したくだりは該当せず。スーパー堤防事業推進のために、区は買収バンバンやってますから。つまり、ルール違反、反則、ですね。