6月以降、4つの清掃工場が稼動停止に追い込まれた水銀問題について、東京23区清掃一部事務組合の担当者からまず報告がありました。
・ 清掃工場における水銀の自主規制値(0.05mg/㎥N)は、水銀取扱事業者の労働産業基準を準用しており、20年前と同じで、EUでも同様の値である
・ 水銀がバグフィルターや触媒にも入り込み、他の3工場と桁違いの付着が確認された足立工場は、部品の取替えなどに2億8千万円かかり、運転再開も9月初旬になる見込み。3工場はそれぞれ数十万円程度と日常的なレベル
・ 4工場1400㌧分が稼動停止となった時には、その他の工場のオーバーホールもあり、バンカ貯留量が年末年始ピーク時の8万㌧台より多い9万6千㌧になり、搬入の大幅変更を余儀なくされた
「3工場での経費が各数十万円と日常レベル」とされた件について、練馬区議会議員の池尻成二さんからも追加報告が。「区内では、練馬工場がすでに建て替えでストップしていた上に、光ヶ丘工場で水銀問題が発生。豊島と千歳の2工場に搬入変更したことで、運搬経費が3700万円アップした。また、その千歳工場も水銀でストップすることになり、ごみ処理はつくづくリスクが大きいことだと感じさせられた。」
収集運搬業者の方からは「原因究明のため、現在、収集運搬業者や排出業者に聞き取りを行なっており、8月中旬頃までかかる見込み。産業廃棄物であれば、東京都の指導が必要。また、入口でチェックする排出指導を、区民とのふれあいの中ですすめていく」との報告も。
医療系ごみの恣意的な持ちこみによるものでは、ということが原因として有力視されているようですが、サーマルリサイクルの実施で、市民の分別意識が下がった結果、不燃物が多く混入してしまっていることも見過ごせない事実ではないでしょうか。
その後、清掃一組からは、実行委員会から出された質問項目に沿って順次丁寧な説明がなされました。中でも私が注目したのが「灰溶融処理・溶融スラグの現状と課題」。
これまでも私たちは、灰溶融技術は未成熟であり、安全性に疑問があると指摘、質問も重ねてきました。が、なぜ清掃一組は灰溶融施設を次々と建設していったのか。
平成8年6月、厚生省(当時)の廃棄物処理施設整備国庫補助金取扱要項の一部改正がなされ、このとき、灰溶融・固化設備付属が補助要件となりました。翌月、東京都は新海面処分場の埋立許可の認可に際して運輸省から溶融固化設備の導入の指導を受け、翌9年12月、都の一般廃棄物処理基本計画「東京スリムプラン21」に7箇所の灰溶融施設の建設計画が盛り込まれました。平成12年4月に清掃事業が区に移管されましたが、この計画もそのまま継承されたというわけです。
灰溶融施設には年間78億円が投入されてきましたが、今年発表された清掃一組の新たな計画の中では、鳴り物入りのこの事業について大きな方針転換がなされました。今年の区議会予算特別委員会で私もすでに指摘しましたが、主灰と飛灰の混合溶融をやめ、溶融は主灰だけにする、というものです。どちらも一緒に溶融することで、減容化を図り、かつ灰の資源化(スラグ)も果たす、という説明がなされてきましたが、施設の安全性を確保するためにはリスクが大きく、もはやそれがかなわなくなった証左です。大田第二工場に計画されていた灰溶融施設は留保され、スラグについても、資源化したものの、利用先の確保は依然困難な状況です。
安全性に関する市民の懸念が現実のものとなり、同時に、補助金行政が引き起こす、大規模公共事業の問題点が、清掃工場においても露呈した格好です。