江戸川区の児童虐待死事件について、東京都の児童福祉審議会が検証部会を設置し、さまざまな角度から検証を進めてきましたが、その最終報告書「児童虐待死亡ゼロを目指した支援のあり方について〜江戸川区事例最終報告」が11日、公表されました。
区は、何といっても当事者が検証することが重要として、庁内だけで作業をすすめましたが、この都の「児童虐待死亡事例等検証部会」は、行政担当部局は入っておらず、小児精神、地域福祉、臨床心理、公衆衛生、司法、法医学、児童福祉の分野の専門家によって構成されています。
これに先立つ7日、江戸川区では事件後初めて、学校、民生児童委員、子ども家庭支援センター、墨田児童相談所の四者によるシンポジウム「児童虐待の再発防止に向けて」が開催されました。それぞれの立場から事例報告がなされましたが、1月の事件で一切情報が届いていなかった民生児童委員の方からは「学校から見守りを頼まれる場合でも、その児童の成育歴や家庭環境などについての情報をもらえない。写真を見せてもらったのもかなりあとになってからということもある。見守りの限界を感じる」といった報告がありました。こうした状況では、確かにどこまで見守れるのか。委員の方々は大きなジレンマを感じることでしょう。現場の声を受けて、センター所長は「情報の共有や、依頼のあとのフィードバックについても取り組んでいく」と改善姿勢を示しました。
さて、都の最終報告と、区の検証報告とにおいて大きな違いがひとつ。それは、虐待の疑いをまず抱いたのはいつ、誰か、ということ。区の説明では「9月4日、通院していた歯科医師」ということでしたが、今回の都の報告では、それ以前の「9月初旬、担任が児童のあざに気付き、副校長と学年主任に報告」とあります。通院先の歯科医が気付くことに、毎日接する担任が気付かないはずがないのでは、と指摘してきましたが、やはり、という感を抱きます。個人の責任追及というのではなく、再発防止に向けては、より正確に事実を把握することが肝要です。通報後の各機関共通の問題点としては「児童本人から話を聞いていない」「それぞれが他機関任せ」「連携不足」が挙げられました。
今後の取り組みへの提言の中には、私たちネットが主張してきた「児童本人の気持ちを十分汲み取ること」「連携の窓口となるスクールソーシャルワーカーの活用を図っていくこと」(以上、学校)「児童福祉司など専門性を持った常勤職員の配置」(センター)なども盛り込まれています。
最終報告は「それぞれが専門職であるがゆえに陥りがちな自己完結性を排除し、一歩踏み込んだ実効性のある機関連携にとりくむべき」などと結ばれており、区は、この提言の内容をひとつひとつ着実に実行していく姿勢が必要です。