結婚していない若い恋人の間でおきるDV(ドメスティックバイオレンス)「デートDV」についての講演会が松江第一中学校の全校生徒を対象に行なわれ、私も参加しました。講師はNPO法人レジリエンスの西山さつきさん。レジリエンスとは、回復力、マイナスをプラスに変える力、よりよい自分をつくる力の意で、DV、トラウマを抱えた女性のこころの健康を取り戻し、維持していくためのサポートをしています。区内中学での講演は、昨年の小松川二中に続いて2度目です。
DVというと、殴る、蹴るといった身体的暴力がまず思い浮かびますが、薬物やアルコールの強要もこれに含まれ、また、性的暴力や貸したお金を返さないなどの経済的暴力、馬鹿にする、大切にしているものを壊す、携帯電話をチェックするなどの精神的暴力もDVにあたります。
暴力の原因は、怒りがたまっていることやストレスから、ではもちろんなく、暴力をふるってもいい、と思っていること。講師から「束縛されるのは愛されているから?」という投げかけがあり、2組の男子・女子生徒がロールプレイに挑戦しました。いつも一緒に下校する彼女が、今日は女友達と帰りたい、と言い、彼がいつもどおり一緒に帰ることを強要するというシチュエーション。演じた男子生徒は「こんなことを言われたら相手はいやな感じがすると思う」と感想を。ここで彼氏が言うべきは「君は俺と一緒に帰るんだ」ではなく、「I(アイ)」メッセージ。これは自分を主語にして、自分の気持ちを相手に伝える方法。「今日も一緒に帰りたかったけど、残念」「大切にされていないのかと思って、心配になる」という具合。怒りが高まると、つい相手を責めたくなるのはよくあること。「I」メッセージ、改めて納得です。
「デートDV」にあっている女子高校生の数は10人にひとりの割合。これが女子大生になると5人にひとり、おとなの女性では3〜4人にひとりに。決して他人事ではないDVを未然に防ぐためには、健全なパートナーシップは対等、愛情は束縛ではなく相手への尊重がベースにあることなど、中学生のうちから正しい知識を持つことがやはり重要です。イヤな思いをしていても、身体的暴力を受けているわけではないからDVではない、という誤った判断で、どんどん自分らしさをなくしてしまうケースも見受けられるといいます。
レジリエンスは、一昨年「デートDV」をテーマにして話題となったドラマ「ラストフレンズ」の監修も手がけましたが、やはりそこはドラマの世界。あるべき姿とかけ離れた描写になることも多かったといいます。視聴率も高かっただけに、若者の誤解を招いてはよくない、との考えから、描き方に関して懸念する箇所についてレジリエンスからのメッセージを発信しています。