給食食材費公費化~相反する文科省と総務省の見解
保護者が負担する学校給食食材費について、文部科学省は「私費会計に問題はない。総務省には、文科省の考え方や実態についての理解を求めることが先」と、公費化への移行については極めて後ろ向きの姿勢を見せています。一方、総務省は「要綱等で学校徴収金の保管を規定することは、地方自治法を勝手に拡大解釈することであり、認められない」とし、都教委が2009年、区市町村教委に求めた「学校徴収金事務取扱規定」の策定・施行は「地方自治法違反」と、真っ向から対立しています。
2011年夏までに、自治労が実施した交渉の記録をもとにまとめた両省の考えは以下のとおり。
【文部科学省】
給食費の公会計化は自治体判断。いろいろな指摘もあるので、考えていかなければならないが、現状、法に適応して処理がなされており、特段の措置は考えていない。学校負担となっている滞納問題については別途検討している。
学校給食は、設置者と保護者との委託契約。設置者は「首長ではなく教育委員会」と整理した。契約締結は首長の権限であるが、首長と教育委員会の取り決めにより、その権限を教育委員会に移している。よって、委託契約は教育委員会と保護者の間でなされており、教育委員会は学校に付随する事務として、学校徴収金事務を校長以下教員に下ろしている。
給食費の扱いを私金として処理する場合も、その債権を持っているのは市町村ということになる。公金ではないが、この事務は付随的業務として公務であり、債権の取り立てに関する訴訟費用は公費で支出して差し支えない。教育委員会が法の原則に基づいて判断するのであれば適正。地方自治法や自治体の会計規則等に矛盾しない。(出席者:初等中等教育局企画課校務改善専門官、児童生徒課就学支援係長、財務課調整係、スポーツ青少年局学校健康教育課補佐、他)
【総務省】
旧文部省では、昭和32年、給食食材費は地方公共団体の収入として取り扱う必要はないとの通知を出していた(*地方公共団体が学校給食を明確に実施する、という位置付けになかった時代であったためと推察します。稲宮)。しかしながら、学校給食費は公金であるので、学校職員が直接収納する場合は、地方自治法第171条の規定に基づき、当該学校職員を出納員としてその収納と保管を行わせることになっており、収入したお金は市町村歳入予算に計上しなければならないと考えている。学校給食を市町村事務として処理していない場合は、地方自治法第235条4の2の定めにより、現金を保管するためには法律または政令の規定が必要であり、それがない場合は保管することができないことになる。学校給食を市町村事務として行っているところは当然歳入に入れて適正に行うべき。
地方自治法の判断は総務省の所管するところであり、この間の本省の判断は揺るぎないものと考えている。問題は、法律や政令で特例がないまま行われていることであり、文科省が一定の手続きを行えば取り扱えることになる。委託契約は地方公共団体の事業だからできること。現状、設置者と保護者の委託契約は成り立たないのではないか。私費を職務上扱うことは職務専念義務違反。また、未納者がいれば債務不履行となるが、債権債務が全く曖昧であり、整理が必要。(出席者:自治行政局行政課行政第3係長、能率推進室係長、自治財政局調整課調整係長)
なお、総務省は2011年7月、子ども手当(現在は「児童手当」)に関連し、文部科学省に対し、「給食食材費は公会計への移行が望ましい」と伝えると同時に、学校徴収金の実態調査を行うよう依頼しています。
現状の児童手当制度でも、保育料を同手当から徴収できること、給食費を本人同意のもと、同手当から納付することは、各自治体判断とされ、しくみは継続されています。23区では、荒川区が過年度の滞納分に関し、保育園保育料及び幼稚園保育料につき、同意を得た上で充当。給食費についても実施の方向で検討中。また、葛飾区では、給食費を昨年10月分より先行実施し、すでに20件ほど回収。保育料についても本年2月分より実施していく予定です。いずれも区HPには掲載していませんが、 市原市、八戸市などではHPにて周知もしています。
江戸川区でも、新年度より、保育料の滞納が長年続いているケースから実施予定。都内市部では日野市が今年度より実施、この2月から西東京市と福生市も実施し、他に4市が検討中です。