給食食材費を公費化している自治体は?

 群馬県では、2006年度の市町村教育長協議会において公費化の推進を決め、その年度末に県教育委員会スポーツ健康課と知事部局市町村課の連名で公費化に関する通知を自治体宛て出しています。「学校給食法」に基づく給食費は、歳入・歳出に計上すべきもの、また、教職員の負担軽減がその主な理由。2011年時点で、35自治体中32の自治体で公費化していますが、県からの通知を待つまでもなく、当時すでに26自治体が公費化していたといいます。 

 埼玉県では、2011年時点で、64自治体中、すべての学校が公費化している自治体が26、共同調理場のみ公費化している自治体が6。「埼玉県の学校給食」(平成23年度版)という報告書(P15 )にその自治体の一覧が出ています。11年度から公費化した川口市では、雑入として歳入計上、歳出には賄い材料費として計上しています。川口市の食材費総額は年間約18億円。未納率は0.7~0.8%。2010年12月、「川口市学校給食条例」が可決されましたが、市教育委員会は本条例の目的を「教育委員会の責務と、保護者が給食費を納める根拠を定めたもの」とし、未納対応や現場の負担軽減にもつながる、としています。私費会計のときは、保護者が口座を開く金融機関が学校ごとに指定されていましたが、公費化され、市の扱いになったことで市内の多様な金融機関が利用できるようになりました。振替手数料も1ヶ月10円に統一され、市が負担しています。 

 神奈川県で公費化されているのは33自治体中、開成町と横浜市。2010年12月、「横浜市学校給食費の管理に関する条例」を制定し、2012年度から公費化した横浜市の動きは、全国市民政治ネットワークの仲間である神奈川ネットワーク運動若林とも子神奈川県議会議員が横浜市議会議員だった時の質問がきっかけとなりました。横浜市の食材費総額は約80億円。未納率は1%未満。市は、透明性を高めること、行政責任を明確にし、保護者負担の公平性を保つことをその主な理由としています。 

 東京都内では、あきる野市がかなり早い段階から公費化していました。給食をセンター式で始めた1970年当時にはすでに公費化していたとみられます。当時の経緯を把握している職員がおらず詳細は不明ですが、現職員への取材からは、学校数が少なく、当初から全校センター式での給食を実施していたことで、公費化して一括管理することが合理的との判断だったのでは、とのことです。1995年に合併した五日市でもすでに公費化がなされていたことから特に問題なく公費化を継続しています。直近では、やはり議員の質問、また、監査の指摘を受け、国分寺市が2009年9月に公費化。歳入は雑入、歳出は需要費として一般会計に計上されています。保護者や現場への配慮から、なるべくこれまでの形態を変えずに公費化しようとしたため、食材費がいったん各校の校長口座に入るプロセスは変わっておらず、課題が残っています。東京都教育委員会では、他県のように、公費化に関する全体の状況を把握していません。都内では、現状、この2市のみと思われます。 

 福岡県福岡市での公費化は、議会質問でも取り上げたとおり主に滞納者対策。「福岡市学校給食費条例」第3条「給食費の徴収」で「市長が徴収する」ことを明文化(条例を持つ自治体は同様)。これをもとに、滞納期間に応じて延滞金を課したり、最終催告にも応じない場合は、裁判所を通して法的措置をとり,差し押え等の強制的な回収をすでに実施しています。 

 愛知県名古屋市では、2009年2月、包括外部監査人(p227 ~)より、給食の会計管理を見直し、公費化を求める監査結果が市長と市議会議長に提出されました。07年の市の債権回収事務の監査に際し、学校給食費の未納について小学校7校をサンプル調査したところ、4校で保護者の代わりに学校側が未納分を立て替えていたことが判明。教員が自腹で工面したほか、PTA会費を流用したとみられる手口もあり、1校当たりの立て替え額最高は約5万円でした。監査人は、給食費の未納状況が、市が把握するより深刻な可能性があると指摘。給食食材費を市の歳入・歳出を通す公会計として扱い、未納分は予算で補填し、透明化を進めるよう求めています。これを受け、名古屋市教育委員会ではここ数年、公費化のためのシステム開発費の予算要求をしています。

 包括外部監査(都道府県、政令市、中核市は義務)は、最少の経費で最大の効果をあげることを期待するだけにとどまらず、1997年に導入されたその経緯からみて、行政の適法性、適正性も当然対象となります。包括外部監査には公認会計士があたることが多い中、名古屋市では弁護士が監査にあたっていたことから、この指摘につながったと見ることもできるでしょう。

 なお、文科省は、現在公費化している自治体を3割程度とみているようです。