「被告の主張はよくわからない」と新裁判長がバッサリ!~スーパー堤防取消訴訟第6回口頭弁論

裁判後、参議院議員会館での報告集会にも60名を超える参加者が。大河原まさこ(写真)、田村智子、両参議院議員が激励に訪れた。

 1週間ほど前、本件の定塚誠裁判長が東京高等裁判所に異動となり、谷口豊氏に交代したことがわかりました。 

 谷口裁判長は、東京地裁行政部や、名古屋、札幌といった大都市での経験を積み、最高裁調査官のキャリアも。前裁判長の訴訟指揮には市民誰もが疑問や不満を抱いていただけに、裁判長交代にいくらかの期待を持って臨んだ今日の口頭弁論。結果は、タイトルにあるとおり、原告側のモヤモヤが解消される訴訟指揮が行われ、本件の裁判では、初めてまっとうな進行がなされたと言えます。関係者からは、「これまでの1年半は何だったのか」との声があちこちで聞かれました。

 冒頭、原告代理人より、①スーパー堤防事業が不要かつ不合理な事業であること②本件土地区画整理事業に盛り土が必要ないことなど、今回提出した書面内容についての陳述があり、原告代表からも、住民被害の現状や区当局の強引なすすめ方、さらに、裁判では住民説明と異なる説明をしていることへの不信など、改めて心情が吐露されました。この陳述の申し入れをしたところ、今回はあっさりOKが出たとのこと。なるべく、弁論させないようにしていた?前任者とは大違いです。

 原告側陳述を受け、谷口裁判長はまず、「行政裁量権の逸脱又は濫用については、『小田急高架事業認可取消訴訟』」における最高裁判決(P8上段参照)の枠組みが基本である旨を述べ、被告・江戸川区に対し、いくつもの質問を行いました。なぜか? それは裁判長いわく、「(被告準備書面の)意味がよくわからない」から。このサイトでもお伝えしてきたとおり、原告の主張に対し、あいまいこの上ない被告の態度。ご指摘はごもっとも。前任者は理解していたのか、すっとぼけていたのか、こうした整理もないまま、ここまですすめてきましたが、ここをクリアにしない限り前に進めない、との指揮がとられたのです。準備書面の文言を具体に引用し、書面ではよくわからない点を、自ら次々と指摘しました。私のメモからご紹介します。

【都市計画決定について】

・本件都市計画は、国のどんな計画を前提としているのか?

・ 「盛り土に係る費用負担が軽減され得る事情は事実上考慮している」という「事実上」とはどういうことか。

・「スーパー堤防たりうる盛り土整備を実施」とは、つまり高規格堤防のことか?(この問いに、被告代理人から「高規格堤防とは、スーパー堤防のことですか?」との聞き返しがあり、法廷内から笑いが漏れました。こんなこともご存じない?)

・都市計画決定において、盛り土整備は判断材料にしたのか?

【事業計画決定について】

・本件事業計画とは何か?

・「スーパー堤防たりうる盛り土」とは、具体的にどうすることか?

・「(いったん廃止という)事業仕分け」のあとで事業決定しているが、(国との)共同実施可能性の要素をどう判断したのか? 区として悶悶としていたわけではないだろう。国と協議していたのではないか?

・区は盛り土について費用負担軽減を考慮しながら、単独で行う場合もあるとしていた。どういうことか?

 今日の103大法廷は、これまでとは全く異なる展開となり、「そこが知りたい」と思うことのオンパレード。とりもなおさず、原告側の指摘がようやく真正面から受け止められたということ。これで裁判の中立性がまずは保て、まっとうなスタートラインに立てました。

 裁判長は、どんな判断過程を経てここに至ったのか、事実が見え隠れしている部分をつなげる作業をすることにより、今までの審理をまとめ直すとし、上記の点についての明確な回答を要求。あえて陳述を避けていたこれらの点について、被告代理人は、この場で何とか答えようとするも、しどろもどろ。区は、5月末の書面提出を約束することに。これまで前裁判長の庇護のもとにあった?被告・江戸川区は相当苦しい立場となりました。宿題山積。さあ、どう答える?江戸川区。 

 今回も95名もが傍聴に足を運びましたが、次回口頭弁論も見逃せません。6月12日(水)午前11時。103号法廷。ぜひ多くの方の立会いを。

  裁判後の報告集会には大河原まさこ参議院議員も激励に駆け付けました。生活者ネットワークの都議会議員時代から、首都圏の水問題に取り組んできており、スーパー堤防事業や八ツ場ダム事業が盛り込まれた「利根川・江戸川河川整備計画」策定の強引な進め方について、その姿勢と計画原案の問題点を問いただすため、4月1日、質問主意書を提出されました。同9日に出された政府答弁書とともに、参議院ホームページに掲載されています。すべての回答に「ご指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが」とあります。どっちが、と言いたくなるというものです。改めて多くの矛盾が浮き彫りに。どうぞご一読下さい。「八ツ場あしたの会」が読みやすく整理しています。