住民不在の事業計画変更手続き~スーパー堤防と一体の土地区画整理事業

 お知らせしているとおり、「スーパー堤防事業」との共同事業となった「北小岩一丁目東部土地区画整理事業」の事業計画変更案が、土地区画整理法55条に則り、24日(金)からようやく縦覧に付されます。昨年10月の決算特別委員会にて、江戸川ネットが事業計画変更について質問(新村いく子 P105参照)してから、この間、3か月以上を要しました。この件についての私たちの問題意識はこちらから。 

 昨年12月16日が除却期限と定められた当該地域はすでに8割方移転し、新年も三が日が明けた4日から除却がすすみ、現在は10棟の家屋が残るのみ。うち、建物調査や移転補償契約をしていない権利者は8名。当初255名(権利者88名)が居住していましたが、住民はその10分の1ほどになっている状況です。 

 こうした中での事業計画変更、縦覧、意見書提出の手続きは、単に法に基づく手続きを粛々と踏むだけであって、法の趣旨である住民参加の機会の保障、その拡大に意を用いているとは到底思えません。すでに当地を去った20人の権利者、また、自宅を取り壊し仮移転した多くの方々にとって、ほとんど意味をなさないタイミング。苦悩の末に移転補償契約を結んだ住民にとって、もはや意見を言う気にはなれないという心境ではないでしょうか。 

 法には計画変更の期限についての定めはありません。「単独事業であっても、共同事業であっても、事業の中身は変わらないのだから、計画変更はいつでもいい」区当局はそう考えているのでしょう。しかし、これは全く住民の立場に立たない、行政本位の考え方です。 

 区単独事業から、国の「スーパー堤防事業」との共同事業に変わったのは昨年5月。ならば、昨年7月になされた仮換地指定及び建物等除却照会という行政処分は、共同事業を明記した事業計画に変更してからなすべきだったはずです。行政が事業を執行する上で手続きを適切に行うことは極めて重要。税金を投入する以上、当然の手順であり、今回のように住民の権利に関わる処分ならなおのこと慎重になされて然るべきです。軽微ではなく、縦覧に付すべき重要な変更が確定しないままに下された行政処分は、果たして有効なのでしょうか。

 当初の区による盛り土ではなく、国のスーパー堤防事業による盛り土になれば、権利者の登記は「高規格堤防特別区域」となり、従前より権利が制限されます。これについても行政は、「『高規格堤防特別区域』は『河川区域』の規制を緩和する区域であり、居住に問題はない」と説明しますが、これも住民の立場に立たない行政の言い分。通常登記であれば大深度未満までが利用できるところ、その深さは1.5mに制限される、工作物の設置にも大幅な制限がかかり、いざというときには「堤防」が優先されるなど、住民はそれまでにはなかった権利制限を受けるのです。

 昨年末、スーパー堤防が争点とされず、原告敗訴となった本事業計画取消訴訟において、「スーパー堤防は区画整理の前提ではない」と主張してきた区にとって、判決が出るまでは、区単独事業のままにしておく方が都合がよかった?

 裁判の判決も、行政の手続きも、まったく形式的で、住民の立場はみじんも考慮されていません。 

 なお、事業計画変更案の縦覧手続きは、区のHPや「広報えどがわ」でも周知される「公衆の縦覧」であり、誰もが見ることができるものです。意見書が提出できるのは、土地区画整理法20条に「利害関係者」(土地区画整理運用指針から)とされていますが、施行区域内の権利者に限られているものではありません。 

 総事業費47億円。スーパー堤防事業費30億円(関東地方整備局事業評価監視委員会「再評価」P9参照)のうち、3分の1の10億円を東京都は直轄事業負担金として拠出する義務があります。区画整理事業にも都の支出金が投入され、もちろん、国費はふんだんに。当該区民のみならず、納税者は「利害関係者」として意見を述べることができるでしょう。