江戸川区、直接施行~スーパー堤防と一体の区画整理、最悪のシナリオに
現在も7棟の家屋が残り、うち6棟で生活が営まれている北小岩1丁目東部地区において、江戸川区が明日3日、所有者に代わって家屋等を除却する直接施行を行うことが本日発表されました。居住者がすでにいない中での執行ですが、区は順次行っていく方針で、その事業で最後の一軒に対してやむなくなされてきた先例を思えば、この状況で伝家の宝刀に手をかけるのは異常な事態です。
議会最終日、生活者ネットワークをはじめ、民主・みんな・維新、共産と、3つの会派から、直接施行費用を含む補正予算に対し反対討論がなされるも、多数を占める自公の数の力で可決され、議会が閉会した直後の発表でした。
スーパー堤防と一体という特殊な事業でありながら、「これまでも区画整理では必ず反対があったが、最後には喜んでもらった」と過去の事例を引き、行政主導ですすめてきた結果、数々の区画整理を行ってきた江戸川区が、これまでにない「苦しい決断」(区長招集挨拶)を強いられる事態に陥りました。本来回避すべき直接施行を行うことになったのは、区の政策及び進め方の誤りによるものであり、明らかに失政です。
こうした状況にあってなお、区は、「江戸川区スーパー堤防整備方針」に則り、今後も2兆円以上をかけて区内でスーパー堤防化をすすめるとしていますが、国の見直しにより、必要とされていた本事業も6河川872kmが5河川120kmと大幅に縮小されました。その中で整備の必要性が特記された「ゼロメートル地帯」についても、江戸川区以外どこも推進の方針は持っていません。
スーパー堤防化されれば資産価値が上がるとされてきたものの、荒川沿川の計画区域・平井では、住宅開発を行う民間事業者から相手にされず、結果、整備は断念されました。一方、江戸川沿川ではこの顛末。肝心の区民はこの事業に翻弄され、苦悩し、疲弊しています。区もまた、これまでに例のない「苦しい決断」である直接施行を行わなければならない状況であり、一方、制度をつくった国は本事業に関し、あくまでも受け身の立場。直轄の治水事業でありながら、進捗率は、見直し後ですら26年間で2.8%に過ぎません。いずれの関係者の立場においても、良い状況にはなり得ていないのが現実であり、この事業をこの先も推進することが本当に公共の利益になるのか、改めて考えていかなければなりません。
明日は午前9時、区当局はじめ関係者が80人程集まり、執行本部長である土木部長による執行宣言、公示看板設置、動産調査及び梱包が、4日には動産の搬出、仮倉庫への搬出・保管、そして、建物解体工事は5日から行われ、17日、完了宣言の予定だといいます。