100%執行法に守られるスーパー堤防事業

  2日の判決後の記者会見では、江戸川区と地権者の間で取り交わされる建物等移転補償契約書が資料として配布されました。 

 「甲(江戸川区)による移転又は除却」を定めた第7条には、「正当な理由もなく、乙(地権者)が第1条に規定の期限までに建築物等の移転(除却)を完了しないときは、甲は土地区画整理法第77条各項に基づき、この建築物等を移転又は除却するものとする」とされ、もしそうなったとき、 

 「乙が既に補償金を受領している場合は、甲に速やかに返還する」と。さらに、 

 「正当な理由もなく、乙が第1条に規定する期限までに建築物等の移転を完了しないことにより、甲に損害が生じた場合は、乙は賠償の責めを負う」となっています。(昨年6月、地権者対象説明会での参考資料はこちら。) 

 契約締結前の任意協議では、「判子を押さなければ直接施行執行通知を出す」と二者択一を迫られ、契約書にはこの文言。今後の人生、生活再建を考えれば、どんなに納得がいかなくとも、最後には自ら除却することを選ぶしかない、ということに。 

 7月に区が住民不在の1軒に対し直接施行を行って以来、残った方々は、8月に1人、9月に1人が除却・移転し、10月、11月にもそれぞれ除却・移転が予定されています。区は予告どおり、「1人ずつ順番に」を履行。土地区画整理法は、施行者の100%執行を可能にする法律と言えます。

 開会中の区議会決算特別委員会では、10日、移転補償に関する説明責任についてネットの新村議員が質問。

「昨年6月、地権者対象の説明会の際、当日資料には『移転補償金と税金』『税金の優遇制度』については掲載されているが、『手当』については掲載されていない。しかし、たとえば、児童手当などは子どものいるほとんどすべての家庭が受けているものであり、その影響については事前に説明すべき」と指摘。区画整理課長の答弁は「特別な協力をしていただくので、5千万円の控除があるが、一軒一軒の所得を把握していない。譲渡所得にあたるので税務署に相談するように言っているが、いろんな影響を及ぼすことがわかってきた。説明の仕方をブラッシュアップして、説明責任を果たしていく」というもの。移転・再築という特別なことに加え、 日常生活の原資にも関わることだからこそ、説明は十分かつ丁寧でなければなりません。

 強制力を持たないスーパー堤防事業は、強制力を持つ法律との合体で ようやく成立するもの。 6日の衆議院予算委員会では松野頼久議員が、公共事業のあり方について質問。設楽ダム、川上ダム、霞ヶ浦導水などとともにスーパー堤防も取り上げ、「無駄な事業を復活をさせている場合ではない」と指摘。スーパー堤防についての報告を求められた会計検査院堀部第三局長は、「平成24年1月の『大規模な治水事業に関する会計検査結果』において、基本的な事業スキームとして、一般的に示されている整備手法によって、進捗が図られているとは言えない状況。事業再評価での費用便益の算定式において、効果が必ずしも適切に反映するものとはなっていない状況になっていた」と答弁しています。こちらから。公共事業関連は13分15秒頃から。スーパー堤防は、19分50秒から。