国と区を共同被告に、本丸の「スーパー堤防差止」提訴

 江戸川区でのスーパー堤防事業と一体の土地区画整理事業の取り消しを求める訴訟は現在上告中ですが、これに関連する「仮換地処分取消訴訟」(谷口豊裁判長)の第三回口頭弁論が本日12日、行われました。 

  まず、原告代理人から、「土地区画整理法の専門家である岩見良太郎埼玉大学教授による、事業計画変更手続きに関する意見書を11月末に提出する」との陳述が。 

 谷口裁判長からの「現在、事業計画の変更手続きはどこまですすんでいるのか」との問いに対し、被告代理人から「都から施行者の意見を求められ、都市計画審議会に対し、意見を述べたところ」との回答がありました。しかしこれだけでは、このこと自体が手続きのどの段階なのかは不明。原告代理人から「来年2月頃に、本件について2回目の審議会があるのでは。むしろ被告さんの方が詳しいのではないか」との発言が。次回弁論期日は12月17日(水)午後1時30分、803号法廷にて、との日程が確認され、閉廷しました。

 さて、今日は、国と区を共同被告とする「江戸川区スーパー堤防差止等請求事件」(原告4名)が新たに提訴されました。これまでの裁判は「スーパー堤防」と冠は付いていても、実際は、一体的になされる「土地区画整理事業」の取り消しを求めるものであり、被告は江戸川区でしたが、いよいよ全国で初めて、本丸の「スーパー堤防事業」に斬りこむことに。今回は行政訴訟ではなく、民事訴訟である点も異なります。弁護団によれば、求めたことは、①北小岩1丁目東部地区スーパー堤防事業にかかる盛土工事の差止 ②原告らの精神的慰謝料として各100万円の損害賠償 の2点です。 

 これまでの裁判で、区は、スーパー堤防と区画整理は全く別個の事業と主張し、司法もそれを認めました。ならば、「なぜ、国がスーパー堤防を築堤できるのか」。 当地の土地は施行者が収用したものではなく、土地所有権は権利者にあります。そこに国が合意も得ずにスーパー堤防をつくっていいのか、国にその法的権限はない、との主張です。

 国土交通省とも密接な関係にある研究機関「公益財団法人リバーフロント研究所」報告(P167)によれば、そもそもスーパー堤防事業は強制権を持たない事業であり、築堤する際には、住民の合意を得る必要がある、とされています。しかし住民が合意したのは、区の区画整理事業に伴う立ち退きと補償についてです。 

 大義なき公共事業への変わらぬ反対の意思と、生活再建のはざまで葛藤しながらも、この日を迎えた高橋新一原告団長は「不要かつ有害な事業であり、国の借金が1千兆円の時代にやることではない。1週間以内に移転し、家がなくなる。もう心配することはない。こんなことがあってはならない。住民は立ち上がらなければ。とことん闘う。他の地区の応援にもなればいい」と、新たな提訴への決意を述べました。

 自治体を相手取った公共事業の差止めでは、鞆の浦日光太郎杉などが認められたケースがありますが、国を相手に、公共事業が止まった例はないといいます。小島延夫弁護団長は「裁判所は国のすることにNOと言わない。これは理屈を超えた判断。裁判所は何のためにあるのか。死力を尽くしていく」と語りました。