法律と事実を埋めるものは?~江戸川区スーパー堤防取消訴訟上告棄却

11月末時点の当該地。写真上部のJR線路と同じ高さまで盛り土がなされた。騒音は? 右側・千葉街道沿いは擁壁に?

 2014年10月になされた控訴審判決を不服として上告されていた「江戸川区スーパー堤防事業取消訴訟」について、最高裁第二小法廷(山本庸幸裁判長)は18日、これを退ける決定をし、二審の東京高裁判決、住民側の敗訴が確定しました。

   国の事業・スーパー堤防の名称が付いているものの、被告は河川管理者である国ではなく、江戸川区。区が、国のスーパー堤防事業と一体的に行う土地区画整理事業は、その必要性がなく違法、としていたものです。 2011年11月に提起されてから4年が過ぎ、北小岩1丁目の当該地では、この間、江戸川区が、それまで行わないと言ってきた直接施行(家屋の強制取り壊し)を行うことにまでなり、「スーパー無駄遣い」だとして一旦は廃止とされたスーパー堤防の盛り土がなされました(写真)。

  原審は10回、二審は2回の口頭弁論がなされ、その都度、原告団は明快な主張をしてきました。現地を見ようとしない裁判官にわかるよう法廷でパワーポイントも使いました。控訴審では1回2回とも。 被告証人が、原告代理人の問いに対し、汗をかきかき、苦しい応答に終始した証人尋問もなされました。全く話の通じない裁判長が途中で変わり、ひとすじの光が見えたように思える場面もありました。「被告の主張はよくわからない」と指摘した新裁判長。控訴審での口頭弁論も含め、最後までそれがわかることはありませんでしたが、それでも勝つ。勝たせる? 

 最高裁の判断は、控訴審判決には、憲法違反も最高裁判例に反する点もないことから、「上告棄却。上告審として受理しない」というもの。

 控訴人は原審同様、区画整理事業と一体の盛り土(スーパー堤防事業)の不要性も訴えましたが、東京高裁(奥田隆文裁判長)は「被控訴人は同事業の実施やその内容の変更を決定することができる法的根拠や地位を有するものではない」としていました。 

 国土交通省がヒアリングの際などに再三言うことには、「江戸川区さんがやりたいと言うからやっている。国は受け身の立場」と。制度をつくった国の言い分としてはお粗末ではありますが、一方で、江戸川区は区独自の「スーパー堤防整備方針」をつくっており、これは明らかに区としてスーパー堤防の是非を検討した結果の産物。しかし、「法律」と「事実」が交わることはない。まさに「絶望の裁判所」

  スーパー堤防事業に関しての、今回の司法判断は上記の通りであり、この住民敗訴をもって、スーパー堤防事業が必要な事業として認められたものではもちろんありません。