江戸川区スーパー堤防事業取消訴訟

スーパー堤防の是非、ついに法廷へ

11日、霞が関の東京地裁前に「スーパー堤防建設反対」の幟がはためいた
11日、霞が関の東京地裁前に「スーパー堤防建設反対」の幟がはためいた
 11日、東京地方裁判所に提起された本件訴訟の原告は、本年5月、大きな課題を抱えながらも、土地区画整理事業の事業計画決定がなされた北小岩1丁目東部地区に土地・建物を所有する区民11人。本事業計画決定の取り消しを求める行政訴訟であり、被告は江戸川区ですが、実質上、昨年10月の事業仕分けで「廃止」と判定された、国の「スーパー堤防事業」の中止を求める初の訴訟でもあります。弁護団は小島延夫弁護士を団長に、行政法、土地区画整理法等を専門とする3法律事務所、9人の弁護士による構成。都市計画決定の時点では訴訟は提起できませんが、事業計画決定は行政処分であり、今回の提訴となりました。

 訴えのポイントは次のとおり。
① 盛り土の危険性。区内でも強固な地盤である本件土地に、東日本大震災でも改めて明らかになった、粒子結合の弱い盛り土整備を行うことは土地区画整理法の目的に反し、「災害の発生を防止し、その他健全な市街地造成」を謳う同法6条8項の要件に違反する。
② すべての対象住民をいったん他地域に移転させ、再び移住を余儀なくする、その期間も長いなど、経済面、生活面における住民負担が過大であり、地域コミュニティの崩壊を招く。
③ 基礎事実の誤認がある。本件土地での施行理由のひとつに、区は、緊急車両が入れないことをあげているが、小岩消防署への確認では、そのような事実はない。
④ 区はスーパー堤防事業と一体の土地区画整理事業であると住民に説明してきたが、本件事業計画では区の単独事業となっている。スーパー堤防事業と一体であることを前提になされた2009年11月の都市計画決定と、本年5月の事業計画決定に整合性がない。
⑤ 土地区画整理法に明記されている「照応の原則」に反する。換地する際(当該区域内の別の場所への移転)、従前の居住条件(道路に面している、西南の角など)と同等の対応がなされなければならないが、本件の場合、平地ではなく、そもそも盛り土による階段状の傾斜地になってしまう。
⑥ 土地区画整理事業の目的は①にあげたとおり、たとえば、木造密集地域の解消など、健全な市街地の造成に寄与することだが、本件の場合、スーパー堤防建設がその目的となっており、本来の趣旨と異なる。
⑦ 住民の意見反映がなされていない。

 記者会見では、弁護団長の他、原告団3名の方々、支援する区民代表、計4名から、それぞれ不合理で理不尽な本事業に対する生活者の率直な意見が表明され、場所を弁護士会館に移しての報告集会では、本行動についての丁寧な説明がなされました。

 国の構想に基づきながらも非常にローカルな事業であり、「首都圏の人口と資産を守るため」「零メートル地帯の防災対策」といった総論に目を奪われがちですが、同じ江戸川区民であっても、関係者以外には知られていない重大な課題があります。ましてや「廃止」の判定を受け止めた国民の多くは、もうなくなった事業と思っているのでは?

 この訴訟によって、本事業の問題点が司法の場で改めて浮き彫りになります。長い闘いになるでしょうが、住民の勇気ある行動の結実を見守りたいと思います。