法の番人をもかく乱させるスーパー堤防~江戸川区スーパー堤防仮換地処分取消訴訟判決

原告一名の訴えを却下。その余の原告らの請求はいずれも棄却。訴訟費用は原告らの負担。

「江戸川スーパー堤防事業仮換地処分取消請求事件」(谷口豊裁判長、2013年12月、土地区画整理事業取消訴訟1審判決で請求棄却した裁判長)は、4月20日、上記の判決がなされました。理由も告げられず、判決要旨も配布されず。あっという間の判決読み上げ後、原告弁護団が判決文を入手、解読し、傍聴者に説明がなされました。

原告が求めたのは以下2点。

①2013年5月、被告・江戸川区は国交省との間で基本協定を締結したことにより、盛土整備は国が行うスーパー堤防事業へと変更されたが、被告が、公告・縦覧を要する重要な計画変更手続きを経ないまま行った仮換地指定処分は違法。

②スーパー堤防事業は地権者の任意の同意が必要だが、本件事業は、スーパー堤防整備のために必要な住民の立ち退きを強制的に実現することが実質的な目的となっており、不法目的であり違法。

これに対し、判決の主な内容は、

①土地区画整理事業計画の「設計の概要」の変更は、後で行っても位置や地積といった具体的な内容が変わるものではない

⇒原告は位置や面積についてではなく、施行者が区から国へと変わる「盛り土」についての判断を求めていたが、その点についての記述は理解困難。

土地区画整理法106条(土地区画整理事業の施行により設置された公共施設の管理)の規定に連なる100条の2を根拠に可能。「管理」には「工事」が含まれる。「道路法」 「都市公園法」 「河川法」にもそれぞれ管理の章が設けられていて、工事に関することが書いてある。

⇒原告・被告双方が一度たりとも言及したことがない106条という新たな見解。区画整理事業とは別個の事業としてきたスーパー堤防事業が、区画整理法の条文を根拠にできてしまうとは・・。さらには、他の法律を引き合いに出し、なんとも雑なくくりで、論点をはずそうとしている?

スーパー堤防は法の番人をもかく乱させてしまうよう。ワタシなどには、言うにこと欠いたヘリクツとしか思えません。

そして、行政を相手取る訴訟は、被告がいかに主張しようとも、ろくに語らずとも、最後はちゃんと裁判所が良きにはからって、被告を守り抜いてくれるもののよう。

法的権限については、スーパー堤防差止訴訟でも大きな争点となっています。こちらは裁判長交代により、更新弁論がなされる予定。6月1日午前10時30分。103号大法廷にて。

それにしても、なぜ、裁判官は理由を述べないのか。目の前にいる傍聴者をなんと心得るのか。それで裁判の公開と言えるのか。開廷前、ただだまってじっとしている法廷内の撮影に何の意味があるのか。なぜメディアも、長きにわたるこんな扱いを受忍しているのか。市民にはサッパリワカラナイ。

判決言い渡し後、裁判官が語らない判決の内容を知ろうと、法廷近くの待合室で説明を待つ市民に対し、「待合室を閉めるので出ていくように」と裁判所からの指示。「傍聴に来て、何もわからないままで帰れない。もう少し待って」と『お願い』する市民。時間は午後3時台。裁判所を閉める時間でもあるまいし。待合室は何のため? 裁判所はだれのもの?

何時代?と思うほど、おそろしく敷居が高い。裁判の内容もプロセスも、市民への対応も、改善すべきと思われる点がやたら目につく裁判所。三権の中で、主権者である市民の意見反映が最も遅れているのは間違いなさそう。