スーパー堤防のための拡張解釈、根拠示せず~江戸川区スーパー堤防差止訴訟第5回口頭弁論①

 12日行われた口頭弁論では、冒頭、原告団から新たに出された準備書面及び証拠書類に対し、被告・国及び江戸川区が反論・反証する書面を31日までに提出することが確認されました。 

  原告団は、これをもってすべての主張・立証を尽くしたと述べ、次回38日(火)の結審が確認され、提出書面の要旨について、福田健治弁護士、小島延夫弁護団長が口頭弁論を行いました。 

 この裁判の大きな争点は、国はどのような法的権限のもと、スーパー堤防事業を行えるのか、という点。国及び区は、土地区画整理法100条の2を上げていますが、北小岩一丁目東部地区に係る一連の裁判では、スーパー堤防事業と区画整理事業は別個の事業である旨、一貫して主張してきました。スーパー堤防事業は国の直轄事業、土地区画整理事業は地方自治体・江戸川区が実施するまちづくり事業。ならば、土地区画整理法の中でスーパー堤防事業を実施するなど、被告の主張からしてもありえません。 

 先行した「土地区画整理事業計画取消訴訟」(201511月上告棄却、原告敗訴確定)及び「仮換地処分取消訴訟」(係争中)は、いずれも江戸川区による土地区画整理事業に係る行政処分に対し、違法を訴える行政訴訟です。原告は、その前提として一体的になされるスーパー堤防事業についての違法性も主張しましたが、司法は別個の事業についての判断をすべき状況にないとして、判断は避けられました。

 そこで、スーパー堤防事業の起業者である本丸の国を相手取り、この差止訴訟が民事訴訟として提起されました。なぜ民事かといえば、前者2件が行政による処分に対してなされる一方、スーパー堤防事業は行政処分ではなく、任意で行われている事業に過ぎないため、行政訴訟とはなりえないからです。 

 任意の事業を強制的に行うことはできませんから、そこには住民の合意を得る必要がありますが、その手続きはとられておらず、原告らはスーパー堤防工事に合意していません。こうした中、当該地の住民全員に、自ら自宅を取り壊しさせ、一軒は区による強制撤去まで行って、全員移転、一斉更地にしなければならなかったのは、区画整理事業のためではなく、盛り土を行うスーパー堤防事業のためであることは明白。ならば、その事業を国が実施するための、明確な法の根拠が必要です。 

 国は、昨年末、求釈明に対する回答書を提出しましたが、これまで通り、その根拠を土地区画整理法100条の2「管理」規定に置きました。あくまでも、国のスーパー堤防事業は「土地区画整理事業を行う江戸川区の『管理』の合理的範囲」と言うだけです。しかし5m6mも盛り土し、傾斜面として土地の形状を大幅に変えてしまうことが『管理』と言えるでしょうか。これはスーパー堤防建設「工事」に他なりません(「管理」「工事」の攻防についてはこちらから)。あまりにも非常識な拡張解釈です。

 原告代理人・福田健治弁護士は「拡張解釈の根拠は示されていない。『管理』の概念が法のもと、確定されるべきである」とした上で、 「当該地は原告の私有地。所有権を定める憲法291項に照らしても、法律の根拠なく第三者が事業を行うことはできない。それを示せない以上、この1点をもってしても違法である」と強く主張しました。