所有権・人格権を侵すスーパー堤防~江戸川区スーパー堤防取消訴訟第5回口頭弁論②

 小島延夫弁護団長は、冒頭、「所有権侵害はすでに行われている。これについては、正当化する法の根拠が必要でありながら、それが示されていない。この1点においても差し止められるべきである」と述べました。

  そして「本事業が持ち上がって以来、人格権の侵害も起きている」とし、原告及び家族が冒されている病名をいくつもあげ、心身ともに深刻な病状に追い込まれていること、さらには思い詰めた原告の家族が、市川橋の上から身を投げようとしたところを偶然通りかかった人に助けられた、という事実も語られました。

 高齢の母と隣り同士に住んでいた原告のひとりは、かつては、窓を開ければ母の様子を知ることができ、お互い安心できたが、今はスーパー堤防事業によって住まいが分断されたことでそれもかなわず、不都合かつ不安な生活を強いられていることも明かされました。

 「それもこれも、区画整理事業ではなく、スーパー堤防の盛り土がなければ起きなかった。江戸川区が、スーパー堤防事業を前提に区画整理事業を実施すると決意したことは、『一体的に整備すれば、区は一銭もかけずに工事ができる』と再三説明していたことでも明らか。(金銭的な)損失は生じないかもしれないが、区は、住民に損失が生じることを考慮していない。区画整理はそこに住みながら進めるのが原則。全戸移転は極めて異例。非自発的な移転は、スーパー堤防の盛り土のため。国と区は損害・被害の責任を負うべき」と断じました。

  閉廷後、衆議院議員会館で行われた報告集会であいさつした初鹿明博衆議院議員は、「江戸川区では堤防が切れたことはない。内水氾濫のほうが心配されるが、水位が上がっているときには放流できない。先にあふれるのは下水であることは国も認めている。また、鬼怒川決壊でもわかったように、上流の脆弱な堤防強化を先にやらなければ下流域は被害を受ける。治水の優先順位を見直さなければならない」と語りました。

  全国で初めて提起されたスーパー堤防差止訴訟は、3月8日(火)午後2時30分、結審となります。東京地方裁判所103号大法廷にて。どうぞ傍聴にお出かけください。