注目される法的権限~スーパー堤防差止訴訟第6回口頭弁論
1日、当初の予定より3ヶ月遅れて、スーパー堤防差止訴訟の更新弁論が行われました。判決に向けて、原告・被告・裁判所の三者が日程調整を行ってきていたにもかかわらず、突如、裁判長と左陪席が交代。これまでの内容を知らない、新しい裁判官が判決に関わるにあたり、今までの弁論の内容をおさらいするというのが更新弁論とのこと。原告団の弁論は予定時間を大幅に上回り、約1時間なされました。
103号大法廷に入ると、傍聴席の前に大きなスクリーンが立てられ、傍聴席からは3人の裁判官が見えない状況。しかも、スクリーンは裁判官に向けて立てられているので、映し出されるパワーポイントは傍聴席には見えず。
第一の訴訟、土地区画整理事業計画取消訴訟でパワーポイントが使われた際は、法廷の斜め前にスクリーンが設置され、法廷内の全員で共有することができたのに、今回はなぜ?
閉廷後の報告集会でなされた弁護団の説明で納得。
「斜め前では、裁判官からは見えにくい。今回は、新しい裁判官に事実に基づく主張を知ってもらうことが最重要であり、裁判官の真正面に設置した。そのため、傍聴者には、事前に資料を配布した。」
法廷は、原告席12人、被告席(国土交通省・江戸川区)17人、傍聴者80人以上。
原告代理人の福田健治弁護士から、まず、国が盛り土をする法的権限はないこと、これについての国と区の主張は、法的解釈の点からありえないことが明快に述べられました。次に、西島和弁護士から、パワーポイントを使用し、築堤のための費用便益分析の課題を含む治水上の問題点が、最後に弁護団長・小島延夫弁護士からスーパー堤防建設により生じている権利侵害について、それぞれ詳細な弁論がなされました。
原告からは、水問題研究家・嶋津暉之さん、及び利根川・江戸川河川整備計画策定時の国交省関東地方整備局河川部長・泊宏さんの証人尋問が申請されていましたが、却下。原告3人の人証は認められ、次回実施されることに。
北小岩1丁目の現地では、すでに本年3月末日をもって、国のスーパー堤防事業は完了し、差止についての訴えの利益はなくなっており、損害賠償のみ(精神的慰謝料各100万円)の争いとなっています。
弁論を聴いた岸日出夫裁判長(東京地裁民事第28部)は、法的権限問題に関心を示されました。損害賠償を争うには、受忍限度を超える重大な違法性があることが求められるといいます。法的根拠があるかないか、「仮換地処分取消訴訟」(3つ提起されたうち2番目の訴訟・谷口豊裁判長・東京地裁民事38部)で、法的権限あり、とされた判決の妥当性がポイントに。
次回弁論は、8月23日(火)103号大法廷にて10時開廷。原告の人証が1時間ほどなされることになりました。どうぞ傍聴にお出かけください。
報告集会で、嶋津暉之さんは「治水事業と言いながら、地域のまちづくりありきで、国がコントロールできない。よっていつまでたってもできない。スーパー堤防事業があるために堤防強化がすすまない。今の河川行政をゆがめる元凶である」
原告の高橋新一さんは「現地の周辺には(スーパー堤防予定地なのに)新しい建物が続々立っている。つじつまが合わない。一方、鬼怒川で被害が起きた。(スーパー)堤防を守るんじゃなく、住民を守らなかったら話にならない」とそれぞれ話されました。