スーパー堤防築堤の法的権限は?~スーパー堤防差止訴訟結審①
23日(火)午前、東京地方裁判所103大法廷で行われた「スーパー堤防差止訴訟」(第三訴)の第7回口頭弁論は、争点である法的権限について原告代理人が弁論、その後、原告3名の最後の証人尋問がなされ、結審しました。これまでの概要はこちらから。また、同日午後には、第二の訴訟「仮換地処分取消訴訟控訴審」第1回口頭弁論も行われました。
お伝えしています通り、この間、北小岩一丁目現地ではスーパー堤防の盛り土が完了したため、もはや差し止めはかなわず、原告らの損害賠償のみが争われることに。
これを勝ち取るためには、やはり国と区の行為が違法であることが前提となり、これにより明らかに被害を受け、犠牲を強いられていることを詳らかにしなければなりません。すでに原告敗訴が確定した第一訴訟となった「江戸川区スーパー堤防取消訴訟」でも丁寧に主張されてきたところですが、このときはあくまでも、スーパー堤防事業とは別個の、土地区画整理事業の取り消しを求めたものと整理され、土地区画整理法に100%守られた施行者に優位に展開してきた経緯があります。
そこで、スーパー堤防事業に真っ向から切り込もうと、この差止訴訟を提起。最大7mもの盛り土工事を行うスーパー堤防事業は任意事業であり、国が住民の同意を得ずに行える法的権限はどこにあるのか、が主に争われてきました。
しかし国はいまだ明確な根拠を示せず、非常に消極的な解釈による主張しかできていません。
たとえば、被告が具体に挙げた土地区画整理事業80条(工事)については「『土地区画整理事業』の工事を行う権限を規定したものであり、土地区画整理事業に含まれない工事を実施する権限には言及しておらず、施行者が土地区画整理事業に含まれない工事をおよそ行いえないことまでも定めるものではない」
同100条の2(管理)については「土地区画整理事業の施行者は、本事業自体に含まれない工事についても、当該工事が土地区画整理事業の目的に沿って、事業の施行に必要な範囲内において行われるものに当たる限り、この管理権に基づいてこれらを自ら行い又は第三者に実施させることができる」
裁判所も第二訴訟の原判決において、「土地区画整理法100条の2に言う『管理』の内容に『工事』に相当する行為が含まれないこととされたことが明らかであるとまではいえない」と、まったく煮え切らない作文しかできていません。
こうした行政、司法に対し、原告代理人・福田健治弁護士は「法律の留保原則に反し、そもそも間違いである」と主張しました。法律の留保原則とは、行政活動を行うには法律でその根拠が規定されていなければならない、ということ。特に、公権力行使、国民の権利侵害につながる施策、基本的人権に関わる施策には明確な根拠規定が必要です。
さらに、土地区画整理法80条「工事」と100条の2「管理」の被告の主張については「昭和34年、整合を図って同時に変更、新設されたものであり、100条の2で工事ができるのであれば、80条を死文化させる。一方の意義を失わせる解釈が誤りであることは、法律家であれば誰でも理解できること」と指摘。その上で、
「では、80条がある場合とない場合で、法律上どのような違いが生じるのか」と被告に問いましたが、被告代理人は「この場で回答する必要はない」と、回答を避けることになりました。