「管理」と「工事」の攻防~スーパー堤防差止訴訟結審②

国がスーパー堤防事業を行える権限論については「仮換地処分取消訴訟」(第二訴訟・別訴)の判決報告でもお伝えしましたとおり、新たに、106条がその根拠として、次のように判示されました。

区整法106条は、区整法100条の2の『管理』が終了した後における公共施設の管理について定めているところ、区整法106条3項が公共施設に関する『工事』が完了した場合において施行者から当該公共施設を管理すべき者に『管理』 が引き継がれる旨を定めていることに鑑みると、区整法100条の2に基づいて施行者が行う『管理』は、上記『工事』に相当する行為を含むことを当然の前提としていることがうかがわれる。」

これについても、原告代理人・福田健治弁護士は3つの点から対抗しました。

1)100条の2は、仮換地指定処分により使用収益をする者がいなくなった「土地」の管理を、106条は公共施設の管理を定めているのであり、2つの管理は対象が異なる。よって、106条の「管理」は、100条の2の「管理」が終了した後の管理を定めているものではない。

2)106条の「管理」は、100条の2の「管理」が終了した後に生じるとは限らない。106条1項の場合であれば、両者の管理は時間的に接続しているが、2項の管理では、100条の2の「管理」が継続中の公共施設の管理について、3項の管理は、100条の2の「管理」が終了し、105条3項により公共施設管理者に帰属した土地上の公共施設の管理について、それぞれ定めている。よって、106条の「管理」と、100条の2の「管理」に連続性があることを前提とする別訴判決は、そもそもその前提を欠く。

3)仮にこれらの管理が接続しているとしても、そのことから、100条の2の「管理」に「工事」が含まれると言うことはできない。106条には、管理の前に工事がなされていることを前提とする文言があるが、この工事は、土地区画整理事業の施行者が80条に基づいて行う工事であると解するのが素直であり、わざわざ100条の2の管理に工事を読み込む必要性はまったくない。したがって、106条の条文に工事と書いてあることは、100条の2の「管理」に「工事」が含まれる根拠とはなり得ない。

さらに福田代理人は「被告らはこの判決の論理構成に難点があることに気づいたのだろう」と前置きし、「106条と100条の2を結びつけるために少し別の理屈を用意した」として、「106条には『公共施設に関する工事』との記載があるが、これには『土地区画整理事業の工事』のほか、『公共施設予定地についての公共施設の設置等に向けた工事』があり、その権限は100条の2に基づく」という被告の主張を紹介。被告・国に対し、「80条の工事権限ではカバーされない『公共施設予定地についての公共施設の設置等に向けた工事』とはいったい何か」と問いかけました。

そして、「実際には、公共施設の新設・変更に含まれない工事があるとしても、法2条2項が、そのような付帯工事も土地区画整理事業に含まれる、と規定していることから、80条を根拠に施行者が実施することができ、106条の公共施設に関する工事は、すべて80条により実施可能であって、100条の2の『管理』に『工事』を含む理由は何もない」と主張しました。

また、別訴判決及び被告らが「100条の2の『管理』と、道路法など公物管理法の『管理』を、整合性を持って解釈すべき」としていることについても、「これら2つの管理の対象は全く異なる」と反論。「『公物』は、本来公共主体が全面的に管理するものであるのに対し、100条の2の『管理』の対象である『仮換地指定により使用収益をする者のなくなった土地』は、あくまで私人の所有権に復することが予定されているのであり、施行者の権限は土地区画整理事業の実施に必要な範囲内に限られる。こうした異なる対象を規定する法体系において、整合性を持って管理を解釈すべきとは言えない」と断じました。

判決は、2017年1月25日(水)、103号大法廷にて、午前11時 に言い渡されます。真っ向から対立する主張はどのように判断されていくのか。結審から5ヶ月以上も先になったことは、「仮換地処分取消訴訟」の原審判決にとらわれず、改めて法の番人として慎重にこの問題に向き合おうとする姿勢の表れと受け止めたいものです。