不完全なコピペ判決 ~ 江戸川区スーパー堤防差止訴訟不当判決②

判決内容2つ目のポイントは、スーパー堤防の大規模な盛り土工事により、住民は2度の移転を余儀なくされ、仮住まい中さまざまな不便を強いられる点。

司法はこれについては認めたものの、「こうした負担は耐えるべき範囲であり、違法ではない」とし、さらに、「2度の移転を回避したければ、江戸川区が行っていた先行買収に応じればいい」と判示しました。これまた、コピペ。2013年12月の「江戸川区スーパー堤防取消訴訟」での判決内容とまったく同じです。

そもそも、スーパー堤防事業も土地区画整理事業も買収事業ではありません。スーパー堤防と一体なら区画整理が、区曰く「タダ」でできる、だから何が何でもこの事業と一緒にやりたい自治体の勝手な都合に過ぎません。それなのに、単なる任意買収を、いかにも事業が決定しているかのように「先行」買収と称して、バンバン買収していることについて、会計検査院は2014年3月「大規模な治水事業に関する会計検査の結果についての報告書」にて、スーパー堤防事業について、次のようにビシッと指摘しています。

原則、用地買収を行わないはずが、用地買収により盛り土を行っている箇所が127ヶ所中35地区に及んでいる。(中略)当初想定していた基本構想に基づく河川と都市の連携や、まちづくり事業との共同事業により実施するという事業スキームは十分機能していない。

裁判所もまた基本の制度設計に忠実に判断するべきでしょう。

完成したまちに戻らない人が多数いることから、地域コミュニティの崩壊を招くことについては「区域内に戻るかどうかは住民の選択」と切り捨てました。権力により塗炭の苦しみを味わわされ、その苦渋の選択を迫られる住民の思いに向き合えば、市民にとって、スーパー堤防事業のしくみがいかに有害か、大いなる欠陥が見えるはずなのに。

それは、決して原告団だけの心身の負担や被害にあらず。
スーパー堤防の盛り土は、東日本大震災では千葉県の利根川沿川の2ヶ所でひび割れや液状化、擁壁の開きなどが起き、大雨のときは都内荒川沿川でも法面が崩壊しました。200年に1度の超過洪水にあわずとも、揺れや雨にすら耐えられない構造です。その盛り土の上にまちをつくり、家を新築して、果たして安全な生活ができるのか。

これについても、その事実は認めたものの、それは「一般的、抽象的な危険であり、北小岩当地における具体的危険までは認められない」のだと。

裁判報告をしてくださった福田健治弁護士は「住民がどれだけ傷ついてきたか、書面や陳述で述べた被害を無視し、疑問や批判に全く答えていない」とし、判決にあたり「司法がどう悩み、考えたのか、全く読み取れない判決」と怒りをあらわにしました。

衆議院第2議員会館で裁判報告をする福田健治弁護士と、伊藤真樹子弁護士、杉田敬光弁護士。

衆議院第2議員会館で裁判報告をする福田健治弁護士と、伊藤真樹子弁護士、杉田敬光弁護士。