基本的人権と住民の同意と参加~公共事業改革市民会議院内集会「公共事業を糾す」③
寺西俊一さんは「公共事業」に関する経済学分野での諸言説を説かれる中で、ご自身が支持し、影響を受けたとして、公共事業の現場が抱えている問題をよく見ながら、ではどうすべきなのかということについて重要な意見を出された経済学者お二人の考えについて説明されました。
宮本憲一教授の「社会資本」論:
- 公共事業・公共サービスは社会の生産と生活の一般的条件=「共同社会的条件」である
- 特定の個人・私企業に占有されたり、利潤を直接間接に追求するためではなく、全ての国民に平等に利用され、社会的公平を保証するものでなくてはならない。
- 公共事業の建設・改造・管理・運営にあたっては、周辺住民の基本的人権を侵害してはならない
- 事業の設置・改善にあたっては、住民の同意と参加の手続きが求められる。
宇沢弘文教授の「社会的共通資本」論:
- 一国ないし特定地域に住むすべての人々がゆたかな経済生活を営み、優れた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持することを可能とするような社会的装置(=「Social Common Capital」)
- 自然環境(大気、水、土壌、森林、河川。湖沼、湿地帯、海洋等)、社会的インフラ(道路、交通、上下水道、電力・通信等)、制度資本(教育、医療、金融財政、司法等)
- 上記の「社会的共通資本」は、「市民の基本的権利の充足」という観点から管理・運営されるべきもの
寺西さんは「立ち退きは住む権利を奪われ、高速道路沿線は排ガス汚染にもなる」と具体例を挙げ、「基本的人権を侵害しないためには住民の同意と参加が原則である」「お二人は同じことを別の言葉で主張されているのであり、市民運動に重要な示唆を与え、公共事業は本来こうあるべき」と強調されました。
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