グローバル化による価格高騰は未来からの資源収奪へ

東京ネット学習会①バイオ燃料は真の環境対策か?

→ドイツのボンで開かれた「第9回生物多様性条約締約国会議」から帰られたばかりの天笠さん。政府間会議で184カ国中唯一反対表明した日本をバッシングするビラがまかれ、日本人として恥ずかしかったという。「2010年、日本はホスト国にふさわしくない」と書かれている。

今年の議会活動については、所属委員会をすでにお伝えしましたが、生活者ネットワークの活動においては、今期、東京・生活者ネットワーク「政策委員会」の副委員長を務めることになりました。部会活動は「環境部会」、また、前期から23区ネットでつくっている「23区ネット廃プラ連絡会」にももちろん入っています。

  今期の政策委員会が初めて実施した学習会のテーマは「いま環境・食料・エネルギーで起きていること」。ジャーナリストで、市民バイオテクノロジー情報室代表の天笠啓祐さんにお話を伺いました。

 イラク戦争をきっかけに高騰した石油価格は今や1バレル130ドルを超えていますが、オイルマネーは1バレルあたり1ドル上がると300億ドルが動くといいます。穀物価格もこの間急騰し、いずれも史上最高値。ブッシュ政権による戦争の泥沼化と、脱石油を掲げた「新エネルギー戦略」に端を発したバイオ燃料ブームが、生活を直撃する穀物価格の高騰へとつながってきているのです。

 この異常な事態を招いているのはグローバル化であり、中国冷凍ギョーザ事件やミートホープ事件も、いかに世界規模の競争に勝つか、ということが共通項として根底にあるといいます。鍵を握るのは何と言っても中国で、問題の「天洋食品」従業員の時給は20〜30円。WTO設立以来加速する安値合戦に勝ち抜くことが最優先となっています。企業は生き残るために労働現場にしわ寄せし、コストを下げた結果が安全性を脅かす事態へ。安全性はコストに規定されている状態にあるといえます。

  グローバル化が進んだために、流通革命によって365日24時間営業への対応が広まり、日本では工場やコンビニなどでも在庫を持たず「必要な量を必要なときに調達する」方式がとられています。時間と空間は最大の資源ですが、今は目いっぱい使いきった状態で、さらに環境破壊によって未来の人のための資源をも奪い、破滅の先送りをしている状況だといいます。
 
 市場経済は地球環境を破滅させるところまで肥大化。最後の資源と言われる生命体そのものも利用されていますが、そのひとつ、遺伝子組換え作物の拡大は連作障害と害虫発生を引き起こし、このことが殺虫毒素を組み込んだ作物生産へと走らせ、その結果、耐性害虫の増大、さらにこれを抑えるための農薬使用量の増加につながっています。農薬問題では、インドネシアやマレーシアの大規模プランテーションでも、パームヤシの栽培に大量に使用されており、その汚染が広がっているのです。

 2002年、新エネルギーとして位置づけられた「バイオマス」は、太陽と水がある限り枯渇せず、再生可能な資源。成長過程で光合成によりCO2を吸収しているため、焼却するにしてもCO2の排出はプラスマイナスゼロとなることから、化石資源由来のエネルギーや製品をバイオマスに代替することが地球温暖化対策として有効との動きが加速、政府は「バイオマス・ニッポン総合戦略」を打ち出し、国産バイオ燃料の本格的導入など「バイオマスタウン構築」を推進しています。しかし、世界に目を向けると、バイオガソリンの原料となるトウモロコシなどは、60億もの世界人口をようやく支えている三大穀物のひとつであり、地球規模の食糧需給とのバランスが保てるのかどうか・・。

  穀物価格の高騰で世界の食糧備蓄が歴史的に低いレベルとなるなど、国際社会が近代史上、最も深刻な食糧危機の一つに直面している今この時。
  バイオ燃料は果たして真の環境対策なのでしょうか?