「脱ダム宣言」は、脱ムダ宣言

「ストップ八ツ場ダム住民訴訟4周年報告集会」に参加

→脱ダムの提唱者・田中康夫さんの講演。

 2004年秋、私たち生活者ネットワークのメンバーを含む一都五県の住民が、群馬県長野原町に計画されている八ツ場ダム建設の中止を求め、各地裁に住民訴訟を提起しました。八ツ場ダムの建設負担金を都県が支出するのは違法として、各知事を相手取り、支出差し止めなどを求めてきたものです。その理由はいたってシンプル。水は余っており、新たなダムは不要だからです。東京地裁では、今年6月には利水証人尋問、7月には治水証人尋問、そして今月25日、結審を迎えました。

 人口減少の今日、関東の水需要も減少しています。
 東京都は直近の水需要予測を日量600万㎥になると予測しましたが、1975年7月時点で日量620万㎥であったものが、2008年同時点で480万㎥と激減。実際は99年以降、日量550万㎥を超えた日は1日たりともないのです。都はこれまで、10年に一度の渇水を考えると本ダムからの利水は不可欠と主張してきましたが、原告側は「多摩地域の地下水を含めれば都は日量701万㎥の水を保有しており、渇水にも耐えうる状況」と改めて反論しました。この間、被告側は、渇水の発生割合を5年に一度としていたものを、10年に一度に改めてきた経緯があります。この変化は、水余りを否定できなくなったからに他なりません。千葉県、埼玉県ではすでに下方修正されています。

 被告側はそもそも「これは政治課題であり、司法判断の対象でない」「ダムは国の権限であり、自治体の違法性はない」「住民訴訟は財務会計行為のみが違法性の対象であり、収支があっていればダムの実体論は不要であり、証人尋問も不要」と逃げの一手でしたが、弁護団はこれらをことごとく覆し、正確なデータに基づく緻密で誠実な尋問を展開、弁護団長からは「裁判所は利水、治水面において八ツ場ダムは不要との確信に至ったものと確信する」と報告がありました。判決は来年の3月までに出る見込みで、一都5県では最初の判例となり、注目されます。

 「『脱ダム宣言』は、脱ムダ宣言」をテーマに講演された新党日本の田中康夫さんは「このところの地方からのダム撤回声明は喜ばしいが、近畿の大戸川ダム反対の知事表明は喜んでばかりいられない。淀川水系流域市民委員会は他の3ダムも合わせて不要との結論を出している。1つだけ撤回し、3つをそのままにするのはどうか。新聞報道も欺瞞である」と指摘していました。

 1952年に計画された八ツ場ダムに投入される税金は全国一。長年ダム計画によって多大な被害を蒙った地域を再生させる公共事業こそを行わなければなりません。また、現計画を改め、ムダ使いをなくすことで、国民が不安を抱く医療や福祉、教育、食の安全など必要なところに有効に使っていくべきです。

*八ツ場ダム関連事業の国民の総負担額(起債利息含む)
東京都1280億円 埼玉県1210億円 千葉県780億円 茨城県390億円 群馬県380億円 栃木県16億円 国税4600億円

↓第1回集会で司会を務めた大河原まさ子参議院議員は、政権交代で脱ダムの実現をめざす。右は、これまでの熱闘ぶりを報告する広田次男弁護士。