この4月から公立高校無償化が始まりました。ひとりの高校生につき、月額9900円、年間11万8800円が国費で賄われています。(保護者の所得に応じて、この1.5倍、2倍と3段階)子育て経験者なら誰もが実感するのが、高校から大学にかけて重くのしかかる教育費です。
今日、社会的につくられた格差が家庭の経済格差を広げ、親の経済状況が子どもの学習権を左右する状況になっています。すべての子どもに学ぶ権利を保障すべく、新政権がいち早く無償化を実施したことは、東京ネットが昨年の都議選で打ち出した政策とも一致するところであり、評価しています。
さて、東京都では都立高校生に対し、国基準に3600円上乗せをして、年間12万2400円としていることをご存じでしょうか。この3600円は教室の冷房費。国の制度に伴い、施設整備の一部について都も就学支援金を新たに負担することにしたのです。しかし、都内の私立生は国基準のままです。
ここで指摘すべきは、都内の高校生のうち、私立高校に通っている割合が56%と、他県と比較しても私立生の割合が非常に高いという特徴があることです。昔も今も、私学を抜きに東京の高等教育は語れない、といっても言い過ぎではありません。進んで私学を希望する生徒、家庭もあるでしょう。その一方で、図らずも都立に不合格となり、経済的課題を抱えつつ、私学に入る場合も少なからずあるでしょう。その場合、当座の費用を何とか工面できても、保護者の収入が一気に落ち込むような不況下で、授業料以外にも何かと出費のかさむ私学生の家庭環境も大変厳しいものがあることは容易に推察できます。私学振興を後退させないためにも、都立高の4倍ほどの授業料がかかる私学生についても無償化にすることが望まれますが、少なくとも都としては、今回上乗せした総額約5億円の冷房費については、公私間格差の是正に使うことも検討すべきではなかったでしょうか。
また、朝鮮高級学校を対象から除外している現状は早急に改善されなければなりません。
公私間格差を考える時、40年前から実施されている江戸川区の私立幼稚園保護者負担軽減補助は非常にすすんだ考え方だったのだと改めて実感します。区立幼稚園を6園だけ(現在は5園)にとどめ、民間による幼児教育の充実、振興を図る。私立園に通わせる保護者には、区立園と実質同額の保育料となるよう、月額2万6千円、入園金8万円の補助を行なうというもの。ただ、利用者の自己都合で園を変わった場合にも改めて8万円の入園金が出るというのは、いかがなものか。事業者側への配慮もあるでしょうが、仕分けの対象にすべきでは?
都内に238校ある私立高校のうち、家計の急変への対応として、授業料減免制度のある学校は57.6%。都は昨年度、この場合の補助率を3分の2から5分の4に引き上げ、制度のある学校には定額補助も実施することにしました。基本的にこの制度が全校で実施できる整備が必要であり、将来のワーキングプアを生まないためにも、入学者が経済的理由で挫折することなく、卒業できる体制をとっていかなければなりません。