20世紀型公共事業と21世紀型景観は調和するか?

問われる景観行政団体のまちづくり

 今定例会には、3年前から準備をすすめてきた「景観条例」が上程され、総務委員会での審査となりました。

 景観法は、建築基準法などとは違い、具体のルールは法で定めずに、自治体に委ねることになっていることから、景観行政団体を目指す江戸川区が制定に踏み切ったものです。全国一律の法律や広域的な都道府県の条例ではなく、自治体の条例が大きな意味を持つという点において、ここで意識すべきは、景観まちづくりの手続きを区としてきちんと定めることと、今まで以上に住民の意見反映のしくみを工夫していくことではないかと考えます。条文9条には「区長は、区民及び事業者の意見を反映するための必要な措置を講じなければならない」とあり、法には特に規定のない、区民参加の景観審議会の設置なども定められました。

  ところで、景観法においては、道路や河川、公園などは重要公共施設と位置付けられています。景観計画区域内にあるこうした施設での建設行為が景観に及ぼす影響は大きいことから、公共空間における建築物の建築も当然規制することになります。

  今回の景観計画ガイドラインの中には、江戸川や荒川が大河川景観軸として示されており、堤防法尻から100mが対象範囲となっています。区では、今議会で全会派が一般質問したスーパー堤防事業を今後も推進したい意向ですが、スーパー堤防建設は、河川を含めた区の景観を大きく変えてしまうことも事実です。そこで、景観計画策定委員会において、スーパー堤防建設について、どのような議論がなされたのか質問しました。答えは「策定委員会では議論していない」。

  区では、スーパー堤防事業に加え、小岩駅周辺の再開発事業など、今後も大型公共事業が目白押しです。以前、スーパー堤防予定地の現在の景観が高い評価を得ていることをお伝えしましたが、小岩駅周辺も、たとえば西小岩の蔵前橋道路沿線は「低層の街並み」が評価されているものの、今後30階建てのビル建設が予定されるなど、幹線道路沿いのスカイラインは保全できるのかどうか・・。区民、有識者などがそろった策定委員会で、なぜ議論しなかったのか。これはこれ、それはそれ、では景観条例、景観計画の意味はありません。

 20世紀型公共事業の推進と、21世紀に生まれた新たな景観の視点。開発と保全をどう調和させていくのか。景観行政団体に名乗りを上げる江戸川区に問われる大きな命題です。