指定管理者制度に新たな課題

「総合体育館」で管理者交代

 区が指定管理者制度を本格導入したのが2006年。現在32の施設が本制度の活用によって運営されています。この制度のしくみのひとつが指定期間を設けること。区では「タワーホール船堀」「ホテルシーサイド江戸川」については期間を10年としましたが、その他は5年。指定管理者の指定には議会の議決を要することから、第四回定例会には、指定期間を終える施設のうち、11の施設の新しい指定管理者の議案が諮られました。

 選定については、庁内組織で実施されていますが、今回、唯一、現在の指定管理者ではない事業者が選定されたのが「総合体育館」です。もちろん、現在の管理者も応募していましたが、選定された事業者より8ポイントも低い結果となりました。公開されている選定結果は3項目に分かれており、「経営能力」「効率性」については大して差がないものの、「安定的かつ質の高いサービスの提供」の項目について大きな差がつきました。プロポーザルの内容、そこに、これまでの実績評価が加味された結果です。

 厳正な選考のプロセスを経て、新たな事業者が選ばれることに異論はありませんが、こうした場合、隠れたコスト問題(サンクコスト)が生じることになります。具体的には、過去5年間で蓄積された管理者のスキルや業務研修、また、自治体や住民との人的な関係など、さまざまなアドバンテッジがそこで途切れることです。このことは、市民の無形の財産を失うこととも言えます。今回のことを受けて、この視点での整理も必要ではないでしょうか。

 指定期間の考え方も、行政にとってはメリットですが、事業者にとっては有期雇用を増やすことになり、更新できなければさらに痛手となります。公の施設管理は、ハコだけでなく、やはりそこにいるヒトの業務能力によるところが大きいものです。そこに蓄積された財産を公平適切に評価して指定管理者を指定することは相当に難しいことと言えそうです。

 指定管理施設では、区民もさまざまな業務に携わっています。他の自治体では、管理者が変わっても労働者はそのまま労働を継続できるようなしくみにしているところもあることから、このことを努力義務として、応募要項などでうたうことも検討すべきではないでしょうか。