「BCP」とは「災害時に重要業務が中断しない」または、「重要業務が中断したとしても目標時間内に再開する」ことで取引の他社流出、シェアの低下、企業評価の低下を未然に防ぐための対策として、主に民間企業で策定されてきました。民間でスタンダードとなっている本計画が、昨今多発する自然災害、SARSや新型インフルエンザ、テロ対策などへの危機管理として、行政体にも普及しています。
「BCP」の要は、設備・人・資金・情報といった資源管理。
2001年9月11日の米国同時多発テロ発生時、世界貿易センター地域内に所在していた金融系企業では、最重要拠点を失ったにも関わらず、9000人以上の従業員を無事に避難させたばかりか、翌日からその拠点にあった事業の一部を他の場所で再開するなど、「BCP」の効果が発揮されました。この企業では、業務状況・リスク状況を分析した上で「BCP」を策定。あらかじめ、どの業務を、また、どの従業員を他のどこの拠点に移すかを定めていたといいます。
東日本大震災でも、福島県内に主要工場を持っていた国内電機メーカーや自動車メーカーが、「BCP」により、発災後即座に西日本の別工場に業務を移し、事業の停滞を回避。首都圏では、東京ディズニーランドが2万人の来場者を帰宅困難者にさせない対応を講じ、六本木ヒルズの施設・人などの危機管理体制も注目されました。これらは、事業者の資源管理が徹底していた結果であり、未曾有の大震災による「想定外」を言い訳にするケースも多い中、「BCP」のもと、「想定内」のこととして適切に対処したことを意味します。
総務省のデータによると、2010年4月現在、「BCP」を策定している都道府県は15、基礎自治体では1750中102。ただし、本データは情報システムに重点を置いたものとなっており、総合的な「BCP」についての把握はできていません。
東京都ではすでに2008年、「都政のBCP〈地震編〉」を策定、さらに、2010年に策定した「都政のBCP〈新型インフルエンザ編〉」については本年改定しています。予期せぬ事態が発生した場合でも、都民の生命・財産を守り、生活の早期復旧を図ると同時に、行政サービスの提供を維持する必要があり、都は、全庁的な検討組織を立ち上げて「都政のBCP」を策定、迅速かつ的確な応急対策を講じつつ、災害発生時に行政機能を確保し、短期間で平常業務へ復帰する体制を構築していく、としています。
〈新型インフルエンザ編〉の4つの改定ポイントの中には「パンデミック期に40%の職員が欠勤するとの想定のもとで、人員が不足する保健医療部門に対し、休止業務等のある局の職員を派遣する人員計画を明示し、全庁的な応援体制を構築する」と、人的被害を数値化した上での対応策が盛り込まれました。都では、東日本大震災を受けて11月までに防災対応指針を示し、「地域防災計画」の見直し作業に着手、「BCP〈地震編〉」についても各局が点検作業中であり、その後課題をまとめていく予定です。
都内で「BCP」を持つ区市町村は、港区や日野市など17自治体。策定中及び策定予定の自治体が計27(2011年6月現在)。
都は「BCP〈地震編〉」第三章で、「区市町村と連絡会を開催するなどして、区市町村の『BCP』策定を積極的に支援する」としており、昨年1月、策定の意義や全庁的な体制づくり、優先業務の選定手順などを具体的に解説した「区市町村事業継続計画策定ガイドライン」を作成、区市町村向け説明会を開き概要を説明しました。
江戸川区では「新型インフルエンザ編」については策定済みですが、14ページに過ぎないその内容は具体性がなく、計画というより方針。公開もされていません。港区の「BCP」は70ページにも及び、具体的なポイントがきちんと示されています。
現在区は「震災編」の策定作業に入っていますが、「新型インフルエンザ編」の改定も必要です。もちろん、公開も。