世田谷の取り組みに学ぶ・発達障害支援

条例・計画・基盤整備

療育室にて。東京・生活者ネットワーク政策委員会のメンバー。
療育室にて。東京・生活者ネットワーク政策委員会のメンバー。
1年に7000人ほどの子どもが産声をあげるという共通点のある世田谷区と江戸川区。子ども施策に関し、世田谷区には、江戸川区にはない重要なしくみ、その根拠となる条例や計画が存在します。

平成14年に制定された「世田谷区子ども条例」は、すべての子どもが健やかに育つため、区民が共有している約束ごとです。この条例を根拠に2年後、区の組織に「子ども部」ができ、平成17年には、この条例の推進計画の役割を担う「子ども計画」(次世代育成支援行動計画及び保育計画を含む)ができています。この計画の10本の柱には、子育て支援や虐待予防と同時に、配慮を要する子どもの支援が盛り込まれました。これに基づき、平成20年には「発達障害児支援基本計画」が、21年には「発達障害児支援実施計画」が策定され、この実施計画に基づき、同時にできたのが世田谷区発達障害相談・療育センター「げんき」です。25日、東京・生活者ネットワーク政策委員会で視察しました。

発達障害を早期発見するために、区独自に、4歳6か月を迎える子どものいる全家庭に発達相談リーフレットを送付。希望者の相談に応じています(*江戸川区の乳幼児健診は3歳まで)。早期発見した配慮の必要な子どもを支援するには相応の基盤整備が不可欠。そこで「げんき」ができました。発達障害と診断できる児童精神専門医は全国に300人ほどですが、ここでは4人の専門医を確保しています。成長する中で、支援を途切れさせないよう個別的継続支援を実施。就学前から小学校、中学校へと、次の支援先に引き継ぐために「サポートファイル」が活用されています。

療育は18歳未満を対象としてきましたが、この4月からは、新たに成人期支援にも取り組んでいます。若者支援をずっとテーマにしてきた保坂区長の肝いりです。

こうした取り組みの中で、世田谷区では、虐待を受ける子どもの40%ほどは、何らかの発達障害が背景にあると見ています。子ども本人の療育と同様に家族支援にも力を入れており、アウトリーチも増やしています。

センターの専門性をさらに発揮すると同時に、家族全体への支援、そして保育園や幼稚園、放課後事業に関わる職員の対応力を高めるための技術支援、より敷居を低くし、相談しやすい、来やすいセンターにする努力が続けられています。

一昨年の児童虐待、先日の一家心中と、子どもを犠牲にしてしまった江戸川区が学ぶべき点はいくつもあります。