点のスーパー堤防ではテンで話にならない

利根川水系流域市民委員会再結成集会報告①

 4月29日、「利根川流域市民委員会」再結成集会が開かれ、元国土交通省近畿地方整備局河川部長で、前淀川水系流域委員会委員長・宮本博司さんのご講演を聴きました。テーマは「河川整備計画の民主的な策定を!今こそ河川法改正の原点に立ち返ろう」。

現状の治水事業は「想定洪水をいつの日にか防ぐ」というものであり、常に工事をし続け、たとえ堤防が決壊しても「想定外だったから」「まだ完成していなかったから」と責任回避ができる。「今年起こるかもしれない大洪水から住民の生命をいかに守るか」という視点が欠如している。が、批判や疑問をかわしながら、事業のための計画を何としても実施すべく、隠す・ごまかす・逃げる・嘘をつくことで見切り発車する。ダムをもっと造りたいと本気で思っている現役役人はほとんどいない。住民の反対ではやめられない役人のメンツ、先輩たちのやってきたことを否定できない、継続する方が楽、強烈なOBの圧力などで、ダム建設は継続されていく。反対、というだけでは行政はその時点で相手にせず、行政は逆にラクになる。どうなんだ、と問い詰めていくこと。現場に行けばピンとくる。役人は行かないのでわからない。ピンときたことをぶつけることだ。治水は、守るべき近いところで行うことに効果がある。遠いところでは5階から目薬だ——利根川最下流域の江戸川区が、八ツ場ダムの必要性を主張するのは、まさに5階から目薬というものでしょう。

  他に、八ツ場ダムや霞ケ浦導水事業など利根川流域での河川事業の問題点が各現場から改めて提起され、江戸川区のスーパー堤防についても地質学者で「スーパー堤防・街づくりを考える会」の渡邉拓美さんが報告しました。

 渡邉さんはすでに完成したとされる荒川の平井7丁目、北赤羽、利根川・津ノ宮、江戸川の市川南の航空写真を示し、タイトルに使わせていただいた「点のスーパー堤防ではテンで話にならない」と発言。他に特別な説明などなくてもみなさん納得。

 このように、スーパー堤防はよほどしっかり見ていないと見逃してしまうほど。加えて、津ノ宮は3.11の震災により、盛り土端部の擁壁が開き、ひび割れし、建物地盤の沈下が発生。須賀地区も、舗装の亀裂、法面すべり、陥没が報告されています。越水にも耐えられる堤防のはずが、その手前の揺れのみで機能不全になり、避難場所にはならず。

 こんなものを多くの人々は、唯一無二の安全まちづくりの切り札として「高規格堤防」と信じこまされているのです。費用面だけは確かに高規格。会計検査院がその進捗率を1.1%に過ぎないと改めて公表した通り、実際のスーパー堤防なるものは、実はスーパー堤防ではないのです。