格差を是正し、適切に民意を反映する選挙制度に

  党首討論で明らかになった解散総選挙。駆け引きの争点は違憲状態を脱するための定数是正と選挙制度でした。 

 衆議院議員選挙が「中選挙区制」から「小選挙区比例代表並立制」に移行したのは1996年。2000年の公職選挙法改正により、この年の総選挙から、定数が20人削減され、その選挙区から1人が選ばれる「小選挙区」は300、全国を11ブロックに分ける「比例区」は180、計480という現在の定数になっています。

 さらに、2002年の法改正では、衆議院議員選挙区画定審議会が行った「小選挙区」の区割り改定案の勧告どおり、20都道府県において68選挙区の改定が行われています。「比例代表制」の各ブロック別定数についても、2000年国勢調査の結果に基づき、南関東選挙区で1人増員、近畿選挙区で1人減員。現在、「比例代表制」定数の内訳は北海道8、東北14、北関東20、東京都17、南関東22、北陸信越11、東海21、近畿29、中国11、四国6、九州・沖縄21です 。

 こうした制度の中で、最高裁判所は昨年3月、2009年の衆院選における1票の格差が2.3倍であることについて、都道府県にまず1議席を配分する「1人別枠方式」の格差を指摘した上で、「投票価値に著しい不平等が生じている状態」、つまり「違憲状態」と判断。また、2010年の参院選では、議員一人当たりの有権者数が約24万人の鳥取県と、約121万人の神奈川県の間における5倍の格差について、本年10月、やはり「違憲状態」としたことで、衆参両院そろって「違憲状態」という史上初の事態を招いていました。最高裁は、こうした状態が長く続くのに是正されない場合は「違憲」とすることにしています。

 民主党は、「0増5減」の他に、「比例定数削減」「小選挙区比例代表連用制の一部導入」をセットにした法案を提出していましたが、先の国会で衆院は通過したものの参院で廃案となったのでした。そこで、党首討論の前日、同党は、再度この考えに基づく法案を提出。比例定数を40削減して140にし、そのうちの一部、35議席に「連用制」を適用するとしています。

 党首討論でも議論された「0増5減」は今国会で成立したとしても、来月の選挙は従来の枠組みで実施され、「違憲状態」の中での異例の選挙と言えます。

 さて、「小選挙区比例代表連用性」とは?

     現行のドント方式の変形による計算式を用いるもので、小選挙区で議席を獲得しづらい中小政党に比例代表議席が優先的に配分されることに特長があります。社会党、公明党などが1990年代に提案していた経緯もあり、ここへきて再浮上。民主党が法案に盛り込んだものの、自民党は、少数政党に有利に働く結果、安定して過半数を取る政党がなくなり、不安定な(政治)状況が予想されるなどを理由に「0増5減」のみの先行実施を主張していました。 

 2009年総選挙の結果を、この制度にあてはめるとその違いは一目瞭然。民主党は現状87ある比例代表議席がわずか11議席に。一方、21議席の公明党は49議席に、9議席の共産党は29議席、7議席の社民党は14議席、5議席のみんなの党は16議席に。大政党の自民党も、09年の結果によれば、119議席から126議席となり7増に。 

 このシミュレーションを行った自由法曹団によると、連用制による議席獲得率は、各党の比例得票率にほぼ対応しており、獲得した議席と総定数を比例配分した議席の差は大きくないことから、小選挙区と比例代表をあわせた議席は、民意を相当程度に反映したものになる、とし、小選挙区の過剰議席を「中和」する機能を果たし、結果として、得票率と獲得議席が相当程度まで対応することになる、と結論づけています。しかし、まだ採用している国はないということです。