「スーパー堤防事業費は含まない」河川整備計画~利根川・江戸川有識者会議

18日(月) 午後3時~5時、第11回利根川・江戸川有識者会議が、TKP市ヶ谷カンファレンスセンターにて開かれました。21名の委員のうち、出席者は12名。毎回、ショーゲキの発言が飛び出すこの会議。今回は、国交省よりタイトルの発言がありました。

これに至る経緯は、従前より計画の基礎となる基本高水の設定に疑義を唱えていた大熊孝委員(新潟大学名誉教授)から、

「基本高水を22,000㎥/sとするこの計画は、上流域での洪水調節流量を5500㎥/sとすることから、現存のダムだけでは足りず、今後も相当数のダム建設を前提とするもの。社会的にも財政的にも、自然環境の面からも実現不可能であり、河川工学の見地からもありえない。後世に対して申し訳ない計画。計画概算事業費が8600億円とされているが、その内訳を示してもらい、実現できるかどうかの判断もすべき。資料の提示を求める」という意見が出されたことに始まります。

これを受け、こうした数値にお墨付きを与えた日本学術会議のメンバーでもある小池俊雄委員(東京大学大学院教授) から、

「河川工学として実現できるかどうか、学術会議では考えていない」と。

続いて、野呂法夫委員(東京新聞特別報道部次長)から、

「概算事業費について、税収の保証はなく、借金を増やすことは間違いない。今回(の補正や本予算)が最後の財政出動とも言われている。そんな中でどう進めるのか。たとえば、スーパー堤防事業。資料(八ツ場ダム検証の開示資料より利根川流域市民委員会が作成し、当日、委員に提出した)によると、スーパー堤防事業費は81億9200万円だが、これは少なすぎるのでは? 22kmであれば、1mあたり37万円で済むのか? 荒川右岸の江戸川区平井地区では、延長150mほどで何十億もかかっている。江戸川区によると、荒川・江戸川の下流域での事業化を2兆円(江戸川区が区の治水対策検討委員会に提出した資料)と、途方もない額を見込んでいる。さらに、首都圏氾濫区域堤防強化対策費(168億7300万円)もこれで足りるのか? 八ツ場ダム関係事業費も当初よりどんどん増えている。予算の裏付け資料を出してほしい。」との意見が。

さらに、前回もスーパー堤防事業に言及した関良基委員(拓殖大学准教授)からも、

「8600億円では到底済まない。一度事業仕分けでなくなったスーパー堤防が22kmでまた復活している。財政支出可能な中で、どこから優先的にやるのか。優先順位も示されていない。八ツ場ではすでに盛り土が崩れ始めている。水が谷筋に流れず、盛り土の下を通っているために崩れている可能性がある。これを修復するのに追加費用はどれくらいかかるのか。500億や1千億追加するとなったら、他の計画事業ができない。さまざまな問題を抱える八ツ場ダムやスーパー堤防事業は後回しにして当然だ。予算配分順位も定めるべき。」 

こうした質問・意見を受け、国交省から出たのがタイトル発言。

「スーパー堤防事業は、前々回、清水委員も評価されたとおり、下流の危険性に鑑み、絞り込みを行った。個別箇所の調整により内容が固まる。現時点では(事業費に)含まれていない」 

この清水義彦委員(群馬大学大学院教授)は、江戸川区の「スーパー堤防整備検討委員会」委員(2005~06年)であり、「江戸川区における気候変動に適応した治水対策検討委員会」委員(2010年)。さらには、国の「高規格堤防の見直しに関する検討会」委員(2011年)も歴任。スーパー堤防事業を、何が何でも継続、としたお一人。スーパー堤防を推進したい行政からはモテモテの御仁です。

この回答の前に、こうした国交省の発言も。

「河川整備計画は治水対策メニューを示すもの。事業費を定めるものではない。実現可能性はある」 

多額の税を投入するのに、事業費のことはおかまいなしとは・・。江戸川両岸のスーパー堤防事業費が乗っかれば、先の区の資料に照らしても、軽くプラス1兆円となり、1兆8600億円と倍以上にはね上がるのは必至。さあ、どうする?財務省。これでいいの?納税者。

■有識者会議の突然の打ち切りや、議論を伝える19日付け「朝日新聞群馬版」の記事はこちら

 

 

スケジュールが全く示されなかった有識者会議は、出された重要課題の検討や、疑問点への十分な説明もなく、「意見は出尽くした」として今回で打ち切りとなった。