ダム推進の行政関係者が一市民として公述~八ツ場ダム公聴会

 江戸川右岸の下流域・北小岩1丁目東部地区では、土地区画整理事業の施行者である江戸川区が、地権者の家屋を解体するという「直接施行」なる強制執行を経て、スーパー堤防事業が着手されました。その上流域にて、やはり無駄な公共事業の象徴とされながら、中止とはならなかった、八ツ場ダム事業もまた、数軒の方々が住み続ける中、本年4月10日、国土交通省関東地方整備局が国交省本省に対し、事業認定の申請を行っています。

  身内同士の申請・認定ですから、いずれ認定されることになるのでしょうが、そうなれば、関東地方整備局は群馬県収用委員会に対し、ダム予定地の土地や家屋を強制収用するための収用裁決の申請を行うことが可能となります。 

 この一連のプロセスの中で、4月、認定申請書が公告・縦覧され、地権者や市民が公聴会の開催を求めたことから、6月26・27日の両日、開催されました。

 事業認定に反対の公述が14件、賛成の公述が7件でしたが、賛成の公述を行ったうち4名が行政関係者、3名は地元・長野原町の町会議員及び元議員。賛成公述人に地権者や市民はいませんでした。

 驚いたことに、公務で公述した加須市副市長と埼玉県副知事以外、ダム推進の行政マンであったことを明かしたのは元埼玉県水資源課長のみ。江戸川区に「スーパー堤防整備方針」をつくり、下流自治体を代表する行政の参考人・江戸川区土木部長として、群馬県議会八ツ場ダム対策特別委員会にて、ダム推進について持論を展開した土屋信行さんは、今回「一市民」として賛成意見を述べました。公益財団法人「えどがわ環境財団」理事長、国交省と密接な関係にある公益財団法人「リバーフロント研究所理事など、今もリッパな肩書を持ちながら、なぜ「一市民」として公述に立ったのでしょう? 埼玉県の課長のように、なぜ元職を明かさなかったのでしょう? また、議員の中には、「公述を正式に申請していない」ことをカミングアウトした方も。これらを人は「やらせ」というのではないでしょうか?

 土屋氏退職後、江戸川区が、八ツ場ダム推進を主張していないとしたら、それは賢明な判断であり、歓迎すべきことではありますが。 

 反対の立場で公述された地権者の高山さんは、喪服に身を包み、「生前葬の気持ちで来た」と心境を吐露されました。陳述内容を「八ツ場あしたの会」がHPで伝えています。こちらから。

 公聴会については、地元の新聞では報じられましたが、そのダムの恩恵を受けるとされ、莫大な予算を投入している東京ではほとんど報道されていません(利根川・江戸川有識者会議委員を出していた東京新聞は掲載)。いくつものデータから、もはや治水・利水ともに大義がないことが明白である公共事業が粛々とすすんでいる事実に、一方の当事者である都民も目を向け続けなければなりません。

◆ 公聴会の様子を詳しく伝える高橋比呂志さんの体験記はこちらから。 いつもながら、緻密なデータ・事実に基づく嶋津暉之さんの公述はこちらから。