スーパー堤防と区画整理、一審の誤り指摘~江戸川区仮換地処分取消訴訟控訴審第一回口頭弁論
8月23日(火)行われた本裁判は、一連のスーパー堤防関連裁判の中で2014年、第二番目の訴訟として提起され(被告は江戸川区)、本年4月の原審判決を不服として控訴されました。2015年、三番目に提起された、初めて国を相手取った「スーパー堤防差止訴訟」と同じく、「国が盛り土できる法的権限」が主な争点となっており、この二つの裁判は非常に密接な関係にあります。前回お伝えしたとおり、同じ23日、結審となった「差止訴訟」では、この「仮換地処分取消訴訟」の判決に示された「国が盛り土できる法的根拠」について攻防が繰り広げられたところです。
控訴審第一回期日では、一審判決の誤りについて、小島延夫弁護団長が主張しました。当該の北小岩1丁目東部地区は、もともと区画整理は予定されておらず、スーパー堤防事業を行うから区画整理の対象地となったこと。これは、スーパー堤防を実施するための区画整理であること。江戸川区は1999年、都市マスタープランを策定し、当該地は木造密集地域に指定されたものの、木造密集地域重点整備地域には入っておらず、08年のまちづくり計画で突然区画整理の予定地とされたこと。国においても、2001年の江戸川沿川整備基本構想には、スーパー堤防整備を推進する地区10、計画づくりを進める地区3、整備を検討する地区30、計43地点が示されているが、当該地は入っていなかったこと。
以上を述べた上で、「スーパー堤防について、住民同意のないままに、区画整理で住民を立ち退かせ、私有地の上に盛り土することは認められない」とし、一審が判示した法的根拠の誤りを、福田健治代理人が改めて指摘。午前中の「差止訴訟」では、国が「この場で回答する必要はない」と逃げた「土地区画整理法80条でカバーできないもの」について、この場で再度問いただしました。これは、そもそも、この「仮換地処分取消訴訟」の審理から生まれた疑義。江戸川区は法80条について「施行者が土地区画整理に含まれない工事をおよそ行い得ないことまで定めるものではない」としていますが、控訴人が主張しているのは、そんな都合のいい解釈では、この条文の独自の意義をなくし、なくてもいい条文、つまり死文化させてしまうということ。これについては、江戸川区から回答があるものと思われます。
控訴審は、一審の是非を判断する場であり、何度も期日が設けられることはありませんが、裁判長は「別の部分で気になっているところもある」として、2回目の弁論期日が設けられました。
その「気になる部分」とは原告適格の判断。一審で、土地所有者の息子と一緒に原告となった、隣りに自宅を所有する母親について、判決で「原告適格がない」と断じられたことにつき、控訴人が控訴理由書で「収去した建物を復旧することが可能である以上、法律上の利益は失われていない」と反論。これに対し、江戸川区は控訴答弁書で「収去前の建物の所有権が不可逆的に消滅したことに変わりはない」と陳述していました。「土地はすべて息子所有であり、母親宅については提訴後、家が取り壊されたのだから、そもそも訴えの利益がない」ということのようですが、それぞれの代理人と裁判官による進行協議がなされ、裁判官は「母親には土地使用貸借権がある。裁判を受ける権利が侵害されてはならない」として、江戸川区に釈明を求めたということです。江戸川区は次回までに回答を提出するものと思われます。「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」(憲法32条)。まさに基本的人権に関わる重要な内容。あいまいな言い訳では済まされません。
次回期日は、10月20日(木)午後2時から、東京高等裁判所511法廷にて。どうぞ傍聴にお出かけください。