スーパー堤防、地耐力不足でやり直し~北小岩1丁目東部地区
昨年3月末をもってスーパー堤防建設が完了したとして、江戸川区に引き渡された当該エリアでは、そのスーパー堤防の地耐力が画地によっては基準を満たさず、その部分についてやり直すことがわかりました。権利者の方々がいよいよ家を建てようとしていた矢先のできごとです。ここへきてこのような事態に見舞われるとは、どれほど驚かれたことでしょうか。
私たち生活者ネットワークは、本件について、さまざまな角度から質問を重ねてきましたが、盛り土の安全性についても再三指摘をしてきたところです。
事業が進む中では、特に地耐力については大きな問題意識を持ち、本西みつえ議員は、建設委員会(P22)や予算特別委員会土木費審査(P128)において、「依然、盛り土の安全性に疑問を持ち、不安に思いながら、安全なまちになるということで協力している方々に対し、納得してもらえる対応が必要。安心して暮らせるよう、国や区はきちんと地耐力調査を行い、盛り土の安全性を証明すべき」と質問。区は「区が宅地造成の上面整備を行う上で、画地ごとに地耐力調査を行い、基準値となる30kNの状況を確認してから引き渡す」と答弁していました。
土を盛るスーパー堤防事業は国の事業ですから、本来は国こそがこの調査を行い、安全証明書を出すなどして、区に引き渡すべきでしょう。しかし、市民の不安を一顧だにせず、「これ以上安全な堤防はない」「絶対壊れない」と言うばかりの国がそれをするはずもなく、住民の切実な思いを受け止めた区が判断して行った地耐力調査により、杜撰な工事の実態が発覚することに。
現時点では、調査はまだ全体の半分も済んでおらず、全検査は3月までかかる模様ですが、検査したうちの3割ほどで地耐力不足が判明しているといいます。当該の画地に新築される予定の方々には面談や手紙などで国と区が説明。その原因は盛り土ではなく、もともとの軟弱地盤によるもので、改めて地盤改良工事を行い、画地の境なども直していくのだそうです。
強い反対を示す人たちが圧倒的に多かった2009年、国交省は、住民の求めに応じる形でようやくボーリング調査を行いました。当初、区は、当地にスーパー堤防が必要な理由のひとつとして液状化をあげていましたが、調査の結果、国は「液状化の心配はなく、地盤改良をしなくてもいい」と公表。液状化に関し、区の説明が変わったことについての私の問いに、担当課長は「国が分析をしっかりとした。盛り土のすべり、地盤のすべり、盛り土により地盤がどう圧密沈下するか、さまざまな分析の結果、地盤改良しなくても大丈夫との結果が出た」と答弁(P106)。平井地区では地盤改良も含めスーパー堤防事業だけで47億円をかけ、工期もかかり、費用もかさみましたが、北小岩ではそれを行わなくてよく、「まちづくりニュース」には「朗報だ」とも。
そして、2012年12月、新村いく子議員(当時)が、当地の地盤について、さらに以下の質問(P42)をしています。
「国交省のハザードマップポータルサイトで土地条件図を見ると、北小岩一丁目東部地区は、東半分が自然堤防、西半分は埋土地という地質の違うものになっている。基礎になる土台部分の土の質が違うことが、盛り土にどのような影響を与えるのかは明らかになっていない。このことについて、どのような差異が考えられるのか、差異がある場合、安全な盛り土についての対策はどのようにとられるのか」
当時の土木部長は「土地の条件によって上に盛る土の支持力との関係があるから、当然そのことは評価をしながら、盛り土の仕方については具体的な設計をしていくということになるのは当然」と。
江戸川区はすっかり国に翻弄された格好です。しかし、国の事業と言えども、さまざまな問題を抱える本事業の影響を最も受けるのは自治体住民であり、国にお任せにすることなく、当該自治体として、国の事業の推移をチェックすることが一貫して必要でした。また、2度の移転をさせ、土を盛った堤防の上に住民を住まわせる、といったまちづくりについて、もっと住民の声に耳を傾け、見直しも含めた検討をしてくるべきでした。
権利者への画地引き渡しは、さらに2ヶ月延び、5月末になるとのこと。この先、将来にわたり、住民が不安を感じるようなことが間違ってもあってはならず、行政の責任において安全の確保に努めなければなりません。
そして、明らかに基礎的判断を欠き、すべきことをしていなかったであろう国交省は猛省を。その上で、この事実を前に、スーパー堤防が技術的に確立されているとは到底言えないこと、住民やまちづくりに災いをもたらすことを、国も区も認めなければなりません。