区画整理と一体でも宅地は関知せず!?~衆議院国土交通委員会での北小岩スーパー堤防事業質疑①

14日(金)、初鹿明博衆議院議員(江戸川区)が、北小岩スーパー堤防の地盤強度不足について国土交通委員会で質問されました。動画はこちらから。

国の責任について問われた石井国土交通大臣は、地権者へのお詫びを述べたうえで「国交省が、宅地として地権者に引き渡すための目標とする地盤強度及びその調査方法、調査時期等についてあらかじめ十分確認しておけば発生しなかったことと考えている。国として真摯に取り組んでまいりたい」と答弁。後段は現状を鑑みればそのとおりですが、前段については制度の根幹に関わること。その程度の制度設計だったのかと今さらながら驚かされます。

さらに、山田水管理・国土保全局長は「高規格堤防(スーパー堤防)としての盛り土は、河川管理施設等構造令及びそのマニュアルに基づき、適切に設計、施工を行い、高規格堤防としての安全は確保した」と再三述べていました。

スーパー堤防は、その上に家を建てることを前提としています。なのに、両者の発言は「スーパー堤防としては万全。宅地のことは関知していない」というものです。国直轄の高規格堤防でありながら、私人が家も建てられるところが「高規格堤防特別区域」。これにより地権者は自分の土地であることは変わらないまま、従前より権利制約を受けるのです。なのに、まちづくりと一体の事業スキームの中で、安全性に関して国と自治体、相互に確認する術を持ちえなかったことが初めて露呈した格好です。

具体に発生する補償の範囲については、ハウスメーカーとの違約金も含め「江戸川区の協力を得、地権者のみなさまの要望も丁寧に聞き、検討しているところ。不安を解消するよう丁寧な説明に努める」と局長。

地権者の中には「もう買い取ってほしい」という意見もあり、今回のことについて責任のある国交省が買い取ることを検討する必要もあるのではないかとの質問には 「買い求めに応じるかどうかも含め、補償の範囲については要望も聞きながら検討する」と。この点を再確認されると「検討する予定だが、用地の利用目的、利用の根拠となる事業内容が明確である必要があり、土地を買い取るにはさまざまな課題がある」。では、その課題がクリアされればいいのか。「さまざまな検討があると考えているところであり、国交省としては、区画ごとの宅地の地盤強度が約束した強度となるよう対策工事を行い、早期引き渡しができるよう取り組んでいく」。さらに「現時点では、さまざまな課題があるとしか言えない」とトーンダウンすることに。しかし、否定はせず。

そして、肝心の強度不足の原因については、局長が冒頭の大臣答弁を繰り返したのみで、明快な答弁はなし。

これまでにスーパー堤防事業で地耐力調査をしていたかについては 「まず、高規格堤防の盛り土については安全性を確保している。一方宅地については施主等が地盤強度を確認し、その強度に応じて必要な基礎形式で施工するもの。したがって、平成18年度以降に、区画整理と共同実施した高規格堤防についてはスウェーデンサウンディング等による調査は必要がなかったため実施していない。」

これに対し、初鹿議員は「必要ないというのはみなさん方の判断。もともと土地はみなさんがつくったのだから、それが家が建つ土地かどうか責任を持つのは盛り土施行者だ。もし、これまでの地区でも、地耐力不足の上に家が建っていたとしたら、施主が負担を多く建てているということになる」と反論。

さらに、国は「これまで調査は行っていないが、特段問題が発生したとは聞いていない」とし、これについても「それはつくるときに業者から、これぐらいの対策が必要と言われて建てているからではないか。北小岩は、住民が強度を確認したいということで(区が)調査を実施したから強度不足が判明した。他地区で問題なかったというのは説明にも言い分けにもならない」と断じました。

そして「区画整理と一体でやれば、今回のことの繰り返しになるのではないか。一体整備は不適当であり、今後はやめるべき」と指摘。

大臣は「高規格堤防を整備すれば、整備区間の安全が格段に向上。氾濫時の避難場所として、また堤防上の良好な住空間等多面的に効果を発揮。区画整理は、既存コミュニティ維持、道路・公園等公共施設の新設・改良、健全な市街地の形成、さらに良好な住環境。防災力向上」と、もはや絵空事のメリットを羅列し「存続する」と答弁。「安全」や「良好」とは真逆の事態を招き、地権者を不安にさせ、怒りをかい、予期せぬ補償まで発生する事実を前にしてよく言ったもの。それぞれの土木事業を施行者側の都合で語っているに過ぎません。ここまでのあいまいな答弁と最後の存続表明。この間を埋める原因究明、制度の点検なくして、本来言えるはずもないことです。

初鹿議員は「いつ戻れるかわからないほど、住民を追い込んでおきながら、これからもやるというのは無責任であり、きちんと考えるべき」と国に対し、再考を強く求めていました。

今回のことを教訓に、住民に最も近い自治体こそが、住民生活を思いやれない国に追随するのではなく、再考する姿勢も重要です。

4/14 国土交通委員会で質問する初鹿明博衆議院議員