スーパー堤防の根幹「30H」の根拠示せず~国交省レクチャーから①

右側手前が山添拓参議院議員。国土交通委員も務められている。(12/25 参議院議員会館にて)

25日(月)、山添拓参議院議員が行われた国土交通省水管理・国土保全局治水課のレクチャーの場に、地域住民のみなさんとともに参加させていただきました。今月13日(水)、「高規格堤防の効率的な整備の推進に向けて」の提言が公表されたことを受け、11月16日(木)、国に投げかけていた質問や提案に対する回答を得る目的で行われたものです。

当日は、文書での回答を求めていましたが、結局文書は作成されておらず、口頭での回答となりました。

①「高規格堤防を一部区間で整備した場合や基本的な断面形状が完成していない場合にも、堤防の安全性が格段に向上する」ことの根拠について。

回答は、提言のP5の中ほどに記載された①から③の読み上げに終始。

通常なされるスーパー堤防の説明の域を出ておらず、「一部区間」や「不完全断面」という条件付きスーパー堤防整備によっても安全性が「各段に向上する」説明には全くなっていません。
このことを指摘されると「通常堤防の整備よりはマシと言いますか・・、より良くはなっているのであって・・」と。「『マシ』を『各段に向上』とは、盛った表現ではないか」との応酬がありました。

② 一部区間での整備では、越水した場合、その両端から水が流れ、堤防が崩れる危険性があることの認識について。また、こうしたケースに関するシミュレーションの実施について。

回答は、「そのようなことがあったにしても影響は大きくないと考えている」「一連区間を早く整備していく必要がある」「シミュレーションは実施していない」というもの。

影響が大きくないとの見解については、そう「考えている」に過ぎず、実際の影響がどれほどのものか、コンピューターシミュレーションも可能であり、スーパー堤防上に大型マンションが建設される場合など、越水はどう流れていくのかも含め、シミュレーションしてみることが必要、との指摘が参加者からなされました。

③ スーパー堤防の基本断面形状を「堤防の幅を高さの30倍程度」とする根拠について。

回答は、河川管理施設等構造令 施行規則にある<高規格堤防の安定性>に関する規則第13条の5の読み上げ。「高規格堤防は、(中略)河道内の流水による洗堀に対し、必要な抵抗力を有するものとし、かつ、河道内の水位が高規格堤防設計水位である場合において、越流水によるせん断力による洗堀に対し、必要なせん断抵抗力を有するものとする」というもの。

「30H」の具体の根拠にはなりえていないことを指摘すると、「30Hの根拠は確認できない。誰が調べてもわかるようにはなっていない。経過は不明」との驚愕の発言が飛び出しました。

国交省が言うところの「唯一の超過洪水対策」となりえているのは、「30H」の幅を持たせるからでしょう。①の回答にあるとおり、「通常堤防に比べ断面が拡幅される」「川裏側の勾配が緩やかになる」ことは、スーパー堤防事業の真骨頂となる、制度設計の根幹のはず。そしてこの「30H」が住民に過度の負担を負わせ、共同事業者側にとっても、推進に困難を極める原因でもあるのです。

「一部区間でも不完全でも効果は変わらない」「できる範囲でやればいい」。
この期に及んで何ともお粗末な「レクチャー」しかできない国交省に対し、山添議員が「30年間、何をやってきたんだ」と声を強める場面もありました。当然のご指摘です。