膨大な地盤調査データから問題点を指摘~江戸川区スーパー堤防取消等訴訟第5回控訴審報告①

10ヶ月ぶりの裁判が、本日午前11時より開かれました。

3月、裁判所の文書提出命令が出てから、国が地盤調査データをすべて提出したのが7月。控訴人側は、そこから膨大なデータの分析に着手することとなり、終了したのが10月だったといいます。

法廷にはスクリーンが用意され、控訴人代理人・小島延夫弁護士は、パワーポイントを用い、分析したデータから読み取れる地盤・盛り土の問題点を図示しながら6点指摘。明快に陳述されました。

1) ボーリング調査が一部地域に偏ってなされている。そこは層が固すぎるため、スウェーデン式サウンディング試験調査ができなかった箇所であり、一方で地盤改良工事がなされた画地が存在、また、固すぎる層を含まない非改良地盤もある。
地盤の強度や圧密のバランスが取れておらず、不同沈下を生じかねず、大地震では揺れ方に差が生じ、建造物に悪影響が及ぶ。

2) 新規盛り土内に自沈層(何もせずとも沈んでしまう深刻な軟弱層)が存在している。
画地の広さに関係なく、いずれも5点のみの調査であり、広い画地の場合、調査された地点だけでは地盤調査が不足。地耐力不足を看過している可能性がある。

3) 開示された地質データから事業地の履歴を遡ることができ、それは古地図などで事前に情報が得られることから、盛り土施工前に確認の地盤調査をし、対策ができたはず。
そのような調査はされておらず、これで土地の安全性が確保できるのか疑義がある。

4) 雨水は地盤改良されていない部分に浸透する。そこに水が溜まり続け、地盤改良していない盛り土地盤内を選択的に流れることで、盛り土の粒子間の間隙を埋めていた泥質物を洗い流して水みちを開通させる。
パイピング破壊につながる可能性がある。

5) 豪雨に見舞われるたびに道路の舗装と盛り土表面との隙間に水流が発生し、次第に盛り土を洗い流して道路舗装の下に空隙を生じさせる。
突然の陥没事故を引き起こす可能性がある。法面の傾斜方向の道路部分では、盛り土の最上面と舗装との隙間に水が流れ下り、次第に盛り土表面を洗い流していく可能性がある。

6) 大雨で大量の水が存在したときに大地震が起きれば間隙水圧が上昇。
液状化を起こす可能性がある。特に、上に透水性の悪い泥質の層が載っていれば間隙水圧が上がりやすく、わずかな弱部でもそこから液状化した砂や水が大量に噴き出すことがある。水が噴き出せばその分、地盤の体積が減じることから沈下を起こしたり、陥没が生じる。東日本大震災では、区内清新町で液状化による噴砂現象が発生。盛り土により液状化が抑えられることはなかった。