「思い出せない」担当官~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟第6回控訴審報告③青野証人反対尋問

青野証人へは、まず、治水面について、西島和代理人から反対尋問がなされました。

「本件地区は、越水が起きる可能性があるからスーパー堤防にしているが、そうならば、避難場所にすると危ないのではないか?」 

青野証人「避難とは、もともとは速やかに安全なところにするもの。しかし速やかに逃げられなければ、決壊しないスーパー堤防は緊急的避難場所となる

「一時的、緊急的に避難しなくても、最初から安全なところに行けばいいのではないか?」との応酬に傍聴席から「そうだよな」の声が。

「陳述書には、本件地区で堤防が決壊する可能性については書いていないが?」

本件でもゼロではない」。これは嶋津証人の、国交省資料に基づく証言と真っ向から対立します。

本件地区が毎秒5千㌧を流せる河道が完成していることについては認めたものの、上流での越水の可能性については「上流はどうだったか、すぐに思い出せない。どうなるのかわからない」と、聞き取りにくい小声で。この点はおそらく、明快に言えないナニかがあるのでしょう。

現状、関宿地点で毎秒7千㌧を超える「超過洪水」が発生したら、江戸川上流で越水するのであり、上流で越水すれば、その分減殺され、下流本件区域では越水しません。

「整備の進め方によって、計画規模によらず越水しない河道整備ができるのでは?」には、

「上下流バランスをとって整備する。スーパー堤防でも河道整備を行っている」と。

一方、通常堤防の整備では、断面不足箇所が54km、浸透対策不足箇所も63kmあるとのこと。そこで「会計検査院は、堤防強化対策としてはスーパー堤防より通常堤防の整備を優先すべきと指摘しているが、これについて検討したか?」との問いに「検討したかどうか思い出せない」

今後の越水対策について、答弁書で「現在の技術レベルでは高規格堤防以外に越水に耐えられる構造は確立されていない」としている点について、

「スーパー堤防計画区間以外に越水対策の必要な区間はないということか?」に、「ない」

「利根川水系全体ではどうか?」には「思い出せない。あるかもしれない」

「鬼怒川は、越水対策が必要な区間はなかったのか?決壊後、堤防強化が実施されたが、越水対策はしていないのか?」には「していない」と。

主尋問と打って変わり、企画専門官、河川調査官として高規格堤防整備に精通する立場にありながら、反対尋問ではきわめてあいまいな回答が繰り返されました。

書記官から、はっきりと発言するよう注意を受ける場面もありました。