判決に異議・上告~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟控訴審不当判決②

判決文はわずか23ページ。一審判決をそのまま採用し、わずかに補正されている程度です。

判決文には、控訴人の主張に対し、ひとつひとつ相対する姿勢が見られます。しかし、問題はその中身。被控訴人の主張を文章化、さらに丁寧に追記する箇所も。裁判所というところは、行政の、いかなる言い分もそのまま受け入れ、市民の言い分はいかに主張立証を重ねようとも立証不足、前提を欠く、などと一蹴する。誰のための、何のための裁判なのか。残念なことに、最後には公平、公正とは最も対極にあることを痛感させられます。

判決文の中には、控訴人の主張を退けるにあたり、「『直ちに』~することはできない」という表現が7ヶ所もあります。盛り土の安全に関してが5ヶ所、法的権限に関して1ヶ所、事業の必要性に関して1ヶ所。つまり、争点すべてに用いられています。たとえば、

直ちに不同沈下等の生ずるおそれのある危険なものであると認めることはできない。

・土地区画整理法100条の2の『管理』についても、直ちに工事に相当する行為が含まれないということはできない。

・本件費用対効果分析において、治水マニュアルに沿わない部分があったとしても、直ちにその結果が参考にならないというものではない。 

今のところはいいにしても、この先どうかわからない、と言っているようなもの。すでに完成した事業地に暮らす住民にとっては、盛り土が安全か否かは、『直ちに』のみならず『将来』にわたり極めて重大なこと。法的権限や事業の必要性についても、もちろん同じです。いずれの争点の判断にも『直ちに』を付けざるをえなかった苦しい状況が窺えます。福島第一原発事故の政府会見を思い出す・・。

判決後の報告集会で、法的権限について国に真っ向から切り込んだ福田健治代理人は、

「工事と管理の関係は、狭い解釈が示された(*参照)。また、『立法の経緯にそぐわないということもできない』など、非常に弱弱しい書き方になった。これは法解釈の問題。裁判所は自分の考えを述べればいいのであって、行政におもねる必要はない。自信を持って法解釈を書いてほしかった」と語られました。

<*裁判所の判断:土地区画整理法100条の2「管理」は、土地区画整理の目的に沿って、土地区画整理事業の施行に必要な範囲内において行う土地の保存、利用、改良等の権限について規定したという同条の趣旨に照らすと、その権限は、所有権に準ずる一種の物件的支配権に基づくものとして、土地区画整理事業の目的に沿い、その施行に必要な範囲内で行われる行為を広く含むと解するのが相当。同法80条は「土地区画整理事業の工事」である限り一般的にこれを行う権限を施行者等に認めた規定であるのに対し、同法100条の2は、土地区画整理事業の工事以外の工事を含む保存、利用、改良等の行為において、土地区画整理事業の施行に必要な範囲内にある限りにおいて行う権限を施行者に認めた規定であると考えることができる。両者は規律の対象を異にするものといえ、同法80条が無意味な規定となるものではない。>

集会では、控訴人から上告の意向が示されていましたが、7月26日、上告状兼上告受理申立書が提出され、以下のとおり、弁護団声明も発表されました。

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控訴審判決に対する弁護団声明