20世紀型公共事業を後押しする高規格堤防~篠崎公園地区まちづくり事業説明会

高規格(スーパー)堤防事業と一体の篠崎公園地区まちづくりに関し「工事実施に向けた事業説明会」が5月27日(金)及び28日(土)、それぞれ1時間限定で実施されました。私が参加した2日目は、会場の篠崎第二小学校体育館に40人ほどの住民らが集まりました。

本地区では、国が高規格堤防事業、都が公園事業、江戸川区が土地区画整理/道路/緑地の3事業、合計5事業を行うこととなっています。説明者は、国交省関東地方整備局江戸川河川事務所沿川整備課、東京都建設局東部公園緑地事務所事業推進課、江戸川区土木部区画整理課/街路橋梁課/水とみどりの課。進行は江戸川河川事務所が行い、国が代表して事業説明30分、残り30分が質疑応答でした。

まず、「高規格堤防が基本の形を保っておらず、しかも、ゼロメートル地帯ではないところで実施される」ことについて疑問の声が上がりましたが、国交省は「今日の説明会は高規格堤防そのものについての説明会ではない」との理由で回答せず。「事業説明会」ならば、ここは国が唯一の超過洪水対策と胸を張る「高規格堤防事業」について明快に説明すべき場面だったのでは?

また、説明では事業費に全く触れなかったことから「事業費の合計はいくらか」との質問が。「106億円」との国の回答に「5つもの事業があり、もっとかかるのではないか」との指摘に、しばらくしてから「移転補償費が入っていない数字である」との弁明がありました。

道路や緑地は買収事業であり、区画整理は基本、元の場所に戻るとはいえ立ち退きが必要。何より、高規格堤防事業は一旦更地にして盛り土をするのであり、高規格堤防と一体になされるまちづくりは移転補償費がなくては成り立たず、この費用を入れていない事業費など話になりません。住民置き去りの行政の姿勢が表れた格好です。

本地区の区画整理では、2度移転という住民負担を回避、1度移転で済むよう「飛び換地」を行いましたが、この「飛び換地先」が「各事業の実施範囲」の図に明記されておらず、参加者から「明示すべき」との指摘を受け、国が「図を修正する」と陳謝する場面も。

「篠崎公園の木は何本伐採されるのか」との質問には都が「800本」と回答。「再び緑空間をつくる」とのことでしたが、3ヶ月前には明治神宮外苑再開発で900本の伐採が問題になったばかり。樹木の成長には長い年月が必要であり、また植えるからいいで済まされることでしょうか。声高に叫ばれる「SDGs」や「景観」はどこへやら。環境は依然置き去りの行政の姿勢が表れた格好です。

つまり、大型公共事業の前には結局何も変わっていないということ。変えなくていいと国も都も区も考えているということ。

会場に展示された立体模型を見ると、ボックスカルバート(堤防下に道路を通す手法)の上部、公園と堤防をつなぐ箇所に段差が。なだらかにしていく、とは言うものの、参加者からは「避難の妨げにならないか。避難のときの参考になる事例はあるか」との質問があり、区は「隅田川や江戸川妙典地区が参考になる」と他自治体の事例をあげていました。「江戸川区スーパー堤防裁判」では「避難のための高台」と、区も国もあんなに主張していた「北小岩1丁目東部地区」をあげなかったのはなぜだったのでしょうか・・・。(*隅田川は高規格堤防ではなく、都型スーパー堤防)

当日資料については江戸川河川事務所のHPに掲載するとのことでしたが、さらに、参加者の要望に応え、説明会での質疑については、区のまちづくりニュースに詳細を載せて周知する、高規格堤防工事により、江戸川区民に限らず利用者の多い都立篠崎公園や駐車場及び周辺道路に使用制限がかかることについては、都のHPでも周知することになりました。

立体模型右上部、ボックスカルバートのまち側に段差がある。真ん中白い建物が移転せず、盛り土しない浅間神社。クリーム色部分が区画整理エリア。