日本の社会資本ストックはヨーロッパと正反対~公共事業改革市民会議院内集会「公共事業を糾す」①
9月28日(木)午後、衆議院第一議員会館にて「公共事業改革市民会議」主催、超党派議員連盟「公共事業チェック議員の会」後援による「公共事業を糾す」が開催されました。不要不急の公共事業のひとつ、スーパー堤防問題に取り組む私も本会議に世話人として参加しています。
集会に先立ち、9月14日には本会の要請により「公共事業チェック議員の会」のうち、7名の国会議員の方々が陥没事故のあった東京外環道を視察されています。報道記事はこちらから。(東京新聞 朝日新聞)
基調講演は、日本環境会議(JEC)理事長で一橋大学名誉教授の寺西俊一さんが「公共事業を糾す~ソーシャル・コモン(SC)の復権を求めて」をテーマにお話しされました。ご専門は「環境経済学」で、日本でこの分野をリードされてきました。
ご講演の概要を、以下5回にわたってお伝えします。
日本は戦後70年の間に合計で14本の経済計画をつくってきた。資本主義で自由主義といいながら、多くの社会資本整備を行ってきた。公共事業を軸に敗戦から今日までの経済発展の基盤をつくってきた。
財源は60年代から右肩上がりとなったが、その問題が国民的に明らかになり、政権交代や小泉政権で事業費は減っていった。しかし、2012年第二次安倍政権で微増、復活した。部門別(2019年)では「道路」が圧倒的に多く36.5%。主に高速道路である。これに対し、文教関係や公園整備などは小さい。これは「道路」より「公園・広場」が充実しているヨーロッパとは正反対。公園等は都市部の生活には絶対に必要で、これにより市民がいこいあい、豊かな生活を送れるのである。日本ではいこえる場所がほとんどない。
寺西先生は、数ある日本の公共事業問題の中からひときわひどい事例として、辺野古新基地、そして諫早湾干拓事業を挙げられました。
諫早湾事業費は3000億円。工事を受注するトップ10の事業者から、約7億円が自民党長崎県連への献金に回り、党県連、それに支えられる県行政、請負業者が国民の税金を食い物にしている。政官財の癒着を何とかしないとこの問題は解決しない。
また、辺野古新基地は軍事的にも沖縄に海兵隊がいる必要はなく、世界一危険な普天間基地を返す、としていたのに、90年代後半、その代わりをよこせ、と言い換えられた。海面の70m~90m下はマヨネーズ状の軟弱地盤であり地盤沈下の危険がある。ここまでの深さでの公共事業は世界にも例がなく、しかも7万本以上の杭を打つために650万㎥の土砂をつぎ込む必要があるが、この土砂の量は沖縄県における年間量の3年から5年分にもなり技術的に不可能。安定性についても誰も保証できない。
そして、両事業共通のこととして裁判を挙げ、「最高裁まで行政とグルになり、裁判官として独立した判断をしていない」と指摘されました。
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