5つの重要課題・総括意見その1

2011年度予算特別委員会報告⑬

 バブル崩壊から20年、経済の低迷、財政赤字の拡大、社会保障への信頼感の低下は、国民にかつての自信を失わせ、社会には閉塞感が漂ったままです。
 安定雇用が保障された現役世代が、高齢者を支えるという従来の役割分担は成立せず、現役世代は減少している上に、就労もままならず、本来なら支えるはずの世代が支えられる側に回る現象が起きています。
 21世紀になって10年が過ぎた今、目指すべきは、経済社会が抱える課題解決を、新たな需要や雇用創出のきっかけとし、それを成長につなげる政策です。従来型インフラへの投資効率が低下してなお続けられてきた、公共事業への過度な依存、また、行き過ぎた市場原理主義から舵を切り、生活不安を解消することにより、内需を回復するとともに、出生・子育て・介護などの環境と、教育条件を整備するなど、福祉・教育・医療・住宅など生活を重視し、その供給サイドを強化する労働政策こそが、21世紀型の確かな成長につながるものと考えます。

 さて、江戸川区の新年度予算は、主たる歳入である特別区交付金が3年前には900億円台であったものが、100億円以上も減少し、特別区税も500億円を超えていたものが1割以上減少するなど、依然厳しい状況が続く中、区は、これまで充実させてきた基金の活用によりバランスを保ちました。
 国政がどのような状況にあろうとも、住民生活に直接責任を負う自治体には地方政府としての重要な役割があります。この視点に立って、これより、区政の重要な課題と認識する5つの項目について、包括的な意見を申し上げます。各審査の中で述べた個別の案件も含め、今後の区政運営に鋭意反映されることを強く望むものです。

 まず義務的経費と、歳入確保についてです。
 今後の自治体財政を考える上での重要な要素は、何と言っても社会保障関係費の大幅な増加です。東京都の「福祉行政統計編」によると、国民健康保険や介護保険第1号の被保険者数、また、障害者数については、都全体でさほど大きな違いは見られませんが、生活保護受給者と、保育所の在籍者数の人口に占める割合については、自治体ごとにばらつきの大きい指標であることがわかります。特に、昨今、23区における生活保護率の増加幅は大きく、ここ3年間の保護率は2.17%となり、今年度中には20万人を超えるとの見方もあります。江戸川区でも2.56%と、一昨年以降大きく増加しており、各区の負担構造の二極化は鮮明です。適正な制度運用に一層務めるのはもちろんのこと、大局的には、将来貧困に陥ることなく、支える側として能力を発揮できるよう幼児期からの教育を充実させることも重要です。

 一方で、区税徴収や債権回収など、歳入確保のさらなる強化が求められます。公債権・私債権を含め、148億円に及ぶ未収金は、区にとっての言わば埋蔵金であり、区の財政堅持に寄与するものです。回収事務一元化も視野に入れ、今後の取り組みに期待するものです。

 次に行財政改革についてです。
 江戸川区では、2001年、ひっ迫する財政状況を背景に、国の「集中改革プラン」に先立ち、公務員定数削減など一連の行財政改革を断行してきました。1168億円という財政効果を生み出したこと、また直近では2年連続で実質公債費比率全国一位という評価がある一方で、雇用機会の不均衡や、正規・非正規職員間の格差の問題が浮き彫りになっています。人件費を含む経常経費の抑制による財政健全化は限界にある、とも言えます。これまでの行財政改革が、質と量の関係において、量の軽減に力点が置かれていたとすれば、今後はその成果の中に、質の内容を再確認するという、数字に表れない部分も含めた総括をすべきです。新年度が10カ年の長期計画の最終年となる時期をとらえ、これまでの取り組みを振り返り、今後の事業量も見据えつつ、改めて公共サービスの執行体制を整えることが必要です。