スーパー堤防は「非技術的河川事業」~国土技術研究センター堤防委員会より

2018年1月17日 00時17分 | カテゴリー: スーパー堤防

一般財団法人国土技術研究センターは、2008(平成20)年度から堤防委員会を常設。河川堤防の信頼性向上に資することを目的とし、さまざまな課題について継続的に議論、検討を行っています。

開設1年目の09年11月12日には、元荒川下流河川事務所所長の今岡亮司さん(当時:財団法人日本建設情報総合センター技師長)が「堤防に対する認識を探す」をテーマに基調講演。その内容は、技術者としての確かな知見と誇り、そして誠意に満ちたものだと感じ入ります。

・治水の現場では神話になっているようなものがいっぱいあり、整理されないまま現場は惰性で進み続けている。
・永井靖郎さんの論文(昭和40年頃)を非常に有効だと思っているが、今日まで無視され放置されているのは不幸なこと。
・治水の投資をB/Cで評価するのが当然と思われている節があるが、それよりも先に災害、自然外力は大きくなる。それが人心を混乱させ収まらなくなるということがいちばん恐れられていることであり、それを予防する観点から治水計画もある。しかし、今の治水計画で、もし水害が起きたら、これで秩序が保てるかというような評価はなされていない。
・堤防のどこが破堤するかわからず、水害は天災だと言い張ることは技術的には寂しい話。どこで、いつ破堤するかを知らない、隠して取り上げないというのは技術としては恥の部分。
・治水の基本施設である堤防の技術は一体信頼できるのか。越水なき破堤がある限りは、胸を張れない状態ではないか。
・必要な堤防技術とは、計画と見かけと実力が保障できること。

「堤防に関する正しい認識を探す」とは、つまり、堤防神話の検証。

講演最後のパワーポイントは「堤防の可能性」。
「信頼度の高い堤防なら治水の効率化が可能」としつつ、「近頃は非技術的河川事業しかないのではないか」と指摘。そして次のように続けています。

スーパー堤防だとか何とかいうのは、技術とは全く無関係な世界で、大きければいいだろうというだけの話ではないかという気がしてしょうがないということであります。実はこのスーパー堤防の先駆けになるのは、私が荒川下流の所長でいるときに、右岸側の下流、亀戸地区で最初に実行するようなことはしましたが、そのとき、私は堤防をつくるという概念はなかったんですね。たまたまその地区は、戦後40年ぐらいたって、みんな家が改築の時期だったので、東京都が都市計画事業として集中的に直そうということをやっていて、家をつぶすと、それを一旦保留して土地をずっとキープしてきたところだったんです。そのときにちょうど世の中では残土問題がいっぱい発生していまして、残土が不法に捨てられるという問題がありましたので、そんなものがあるならもったいない、まず堤防の脇にそれを捨ててもらいましょう、そうすれば堤防は強くなるし、町も少しは高くなるし、こんないいことはない。だけど、それは堤防だということを私は恥ずかしくて言わなかった。恥ずかしいというのは、大きくすれば安全だろうというのは技術屋でなくても言えることなので、そんなことを技術屋はよう言わんという意味です」

ぜひ全文をお読みください。水害に対する責任論、永井靖郎さんのご提案など、興味深い内容がわかりやすく語られています。

堤防委員会は学識者、関連機関、企業の方々で構成されており、特に江戸川区でスーパー堤防事業推進を主張されてきた山田正中央大学教授、国の効率的な整備に関する検討会委員の辻本哲郎名古屋大学名誉教授のお名前も。このお話をどのように受け止められたのか。そこも興味深い。