ぐうの音も出ない!? 嶋津証人に反対尋問なし~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟第6回控訴審報告①嶋津証人主尋問

2019年1月20日 02時21分 | カテゴリー: スーパー堤防, スーパー堤防裁判

18日に行われた証人尋問には、80名の傍聴者が聴き入り、途中休憩10分をはさみ、午後1時から午後5時まで行われました。

元東京都環境科学研究所研究員の嶋津暉之さんは、大江京子代理人による主尋問で、江戸川の治水に関する基礎的な事実を整理したうえで、情報開示請求による公文書や、国会議員による文書質問回答、会計検査院報告書や土木研究所関連資料など、市民が目にすることのない事実を法廷の場で詳らかにし、本件地区で越水は起こらないことを指摘。国や江戸川区が喧伝するスーパー堤防事業の必要性・有効性に真正面から対抗し、河川行政のあり方を糾弾されました。

原審では、裁判所が、国の誤った説明を追認、「超過洪水」の意味を取り違えたまま判決を出すという事態が起きていました(こちらから。後段参照)。尋問では基礎的な用語の意味までをひとつひとつ説明、引用した資料はすべて法廷内に映し出されました。こちらからどうぞ。

嶋津尋問で語られた項目は以下のとおり。

・利根川水系の河川整備基本方針河川整備計画

・河川整備計画の目標 1/70~1/80(八斗島地点における治水安全度を70年から80年に一度起きる程度の洪水に耐えられるよう設定)

・河川整備基本方針の目標 1/200(同200年に一度の確率)

・ゼロメートル地帯及び内水氾濫との関連

・スーパー堤防整備計画見直しの経緯、進捗状況、今後の見通し

・スーパー堤防整備が進まない理由

・スーパー堤防の整備費用

・耐越水堤防工法の研究調査、実施及び退場の理由、今後の見通し

嶋津さんは「治水安全度の目標は大きい重要な河川ほど大きく設定される。利根川は日本で最大の河川であり、基本方針の目標は最も大きい1/200の治水安全度になっている。しかし、実際に1/200という大きな治水安全度を達成することは困難なので、河川整備計画では30年間の期間で実際に達成可能な目標として1/200よりかなり小さい1/70~1/80という治水安全度の目標が設定された」ことに基づき理論を展開。

国が原審から主張する「上流で流下能力を超える流量になったからといって、・・・下流で流量が低減するとは限らない」についての見解を問われ、

国の主張は堤防には余裕高があるから、洪水流量が流下能力を超えても氾濫することはないというものだが、この主張は国の治水計画の基本を否定するもの」と断じ、当地について具体的に説明されました。

江戸川の計画余裕高は2m。この余裕高を無視して堤防の天端まで洪水を流すことができるならば、江戸川の流下能力が飛躍的に高まる。江戸川の流下能力はスライドで示したように、国交省の評価では毎秒4000㌧を下回っているところもあるが、堤防天端まで流してよいならば、江戸川の流下能力はほとんどのところが毎秒7000㌧以上になる。そうなると、今後の河川整備は不要になる。本件地区の流下能力は毎秒5000㌧台だが、堤防天端までの流下能力ならば、毎秒10000㌧以上にもなる。国のこの主張は、流下能力が毎秒10000㌧以上もある本件地区をスーパー堤防にするという話になるわけで、論理破綻をきたしている

嶋津さんが述べられた主な意見。

・本件地区は、河川整備計画によって今後30年間の河川整備で達成する1/70~1/80の治水安全度がすでに確保されている。

・国交省の計算では、本件地区は、上流で溢れないという前提でも、河川整備基本方針 の治水安全度の長期目標1/200の洪水があっても越水がない。

・実際には治水安全度が低い上流部で溢れるから、もっと大きな洪水でも本件地区で越水がないことは確実であり、本件地区の安全度は非常に高い。江戸川右岸左岸ともに本件地区より上流において河道目標流量を下回る区間が多数あるので、上流でまず越水が起こり、本件地区に達するまでに流量が減少することから、本件地区ではその意味でも二重に越水の危険がない。

・本件地区は安全度が極めて高く、スーパー堤防を整備する必要性が皆無である。

・国交省はスーパー堤防の整備スケジュールも示せない。主体性がなく、人任せの無責任な河川行政である。大勢の住民を、何年か区画整理や都市再開発で立ち退かさなければ、スーパー堤防を整備できないという仕組みそのものが間違っている。

・今後の河川整備は、流下能力が不足している区間の改善に力を注がなければならないのは自明。流下能力不足箇所を放置しておいて、すでに治水目標を達成している本件地区について高額の河川予算を使ってスーパー堤防に変える工事を行うのは誤った河川行政である。 

最後には「鬼怒川水害」の映像も映し出され、「鬼怒川水害は現在の河川行政により起きた」と国交省の責任を厳しく問われました。

主尋問が終わり、都築政則裁判長から「では反対尋問を」と促された国は「ありません」と。

肩透かしにざわめく法廷。ぐうの音も出ない、のでしょうが、誠意のない、そういう態度がまず大いに問われます。裁判所にはここも裁いてほしいもの。

嶋津証人の証言要旨はこちらからもご覧になれます。