学校選択制は所期の目的を果たしているか?

今年も広がる学校間格差から考える

「保護者や子ども自身が自らの意思で入学する学校を選択することで、学校への親近感と積極的な関わりが持てる。」「学校関係者の意識改革が促されることで、学校の活性化につながり、魅力ある学校が創られる原動力となる。」このことが期待され、当事者のための「学校選択制」が江戸川区で始まって4年になります。導入をめぐっては、①特定の学校に人気が集中し、学校間格差を生まないか③区全域が対象になることで、学校と保護者・地域との連携が薄れないか、など不安材料も指摘されてきました。

中学校に関しては今年度、3割の子どもたちが学区外を選択、小松川・小岩・西葛西・清新町などでは定員をはるかに超える希望者が集中する学校がある一方で、学区内外を問わず希望者が少ないまま推移している学校、また、選択制導入時には抽選を行うほどだったにもかかわらず、ここ数年は定員にすら届かない、といった学校も見られます。こうした状況は、同じ地区の隣接する学校において顕著であり、不安材料が浮き彫りになった一面があることは明白です。どこでも等しく同質の教育が受けられることもまた、義務教育における公立学校の使命であり、選択制であっても、二極化に拍車がかかる今の状態は改善されなければなりません。品川では今年、入学者がゼロという学校が話題になり、また、中学校の先生が6年生家庭を訪問して入学のお誘いをする、という区もあるといいます。

公立学校に望まれているのは、本当に独自の「魅力ある学校」なのでしょうか? 先生も子どもたちも数年で入れ替わる状況にあって、果たしてそれは可能なのでしょうか? いじめなどがなく、誰もが安心して通え、基本的な部活動も行われている、そんな学校が望まれているのでは?

江戸川区でも5年目を迎えるという節目を機に、「学校選択制」の検証を行うべきです。選択制を推進する教育委員会は、特に、希望者が少ない学校については、なぜ選択されなかったのか、その学校の課題を丁寧に調査分析し、保護者や地域とも連携しながら、課題解決に努めることが必要です。