緊急経済対策~その目的に沿った適切な使い方を

 安倍内閣が11日、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定し、来月上旬から審議に入る見込みです。自治体なども合わせた総事業費は20.2兆円。国が支出する10.3兆円に加え、別途、基礎年金国庫負担などを加えた13兆円の補正予算を組みますが、うち約8兆円は借金によるもの。適切な使い方が当然求められます。

 復興・防災には3.8兆円、自治体なども合わせれば5.5兆円が充てられますが、本対策の考え方に明記された「東日本大震災からの復興」や「新しい東北をつくる」、「老朽化したインフラ対策の重点的実施」に着実に取り組むことが何よりも重要です。 

 国交省は現状のインフラを維持するだけでも、向こう50年で190兆円もが必要としています。しかしこの数字は、橋であれば60年という税法上の耐用年数を超えたら造り替えることを想定して仮算出したもので正確性に欠けます。しかも上下水道や高速道路は含まれておらず、改めて計算し直し中とのこと。当然、国のみならず、自治体が管理するものも多数あります。政権与党の政策集には、防災の名のもとに、スーパー堤防などの建設が盛り込まれていますが、こうした状況では、新規事業に着手する余裕などないことは、誰の目にも明らかではないでしょうか。 

   2007年、第166回国会において、「江戸川区北小岩地域のスーパー堤防計画の見直しに関する質問主意書」を提出した笠井亮衆議院議員に対し、答弁したのは誰あろう、安倍総理その人。「当然のことながら住民の方々の意向を尊重する」姿勢を示しながらも、「整備方針を変更する考えはない」と答弁しています。

   しかしながら、安倍さん。当時言われていた「大都市を破堤による壊滅的被害から守るため、計画規模を超える洪水により越水しても破堤することのない高規格堤防」については、この間、さまざまな欠陥が露呈。前政権では、無駄な公共事業の筆頭として廃止の判断までされ、国も当初の計画変更を余儀なくされています。今では、全体の1、2割にまで縮小されている状況ですが、ここまで縮小すること自体、施工価値が見いだせない工法と断じられたも同然では? 他の公共事業で、当初計画の1、2割に縮小されたなどということがあったでしょうか? しかも、堤防とは、つながってこそのもの。縮小して継続、という判断にはかなり無理があります。会計検査院からの2度にわたる制度欠陥の指摘も重く受け止めなければ。政権が代われども、内閣に対し独立した権能を持つ会計検査院の報告・指摘がご破算になるわけではありません。そして肝心の住民とは、取消訴訟で係争中です。 

 そもそも、完成時期がいつになるかわからないような事業では、「緊急」対策とはなりえません。昨年末の区議会一般質問で取り上げた「高規格堤防に関する整備手法業務報告書」の内容も含め、よく精査すべきです。

 被災地の復興は、2年が経とうとする中、まだまだこれから。緊急対策の復興・防災対策でいちばんに掲げた「被災地の復興の加速を最優先」「被災者のニーズを踏まえたきめ細やかな復興施策の実施」を、何はともあれ強力にすすめてほしいものです。除染も手抜きなく。