国が主張撤回、異例の展開~江戸川区スーパー堤防差止訴訟第2回口頭弁論

  国は5月20日に提出した準備書面において、スーパー堤防事業実施にあたり、地権者の同意が必要かどうかという争点について、「河川管理施設である高規格堤防を設置するにあたり、敷地所有者の同意は要件とされていない」と主張。 

 河川法3条2項は、河川管理者が設置した施設は当然河川管理施設になる旨規定されており、「高規格堤防は河川管理施設に該当し、その敷地は河川区域として当然に河川法上の権利制約を受けるものである」とも。 

 さらに、国が高規格堤防を整備できる法的根拠を「土地区画整理法100条の2に基く」と明示。「100条の2による広範な管理権を有している被告・江戸川区との合意の下、高規格堤防事業を実施している」のであるから「適法」だと。 

 これを受け、20日に行われた第2回口頭弁論で、原告側・小島延夫弁護団長は、国がすでに提出している証拠書類(乙40号証)にある一文を引用。 

 「『当該地区は、高規格堤防の整備が完了すると、河川区域になる』とあるが、今回の争点は、高規格堤防を整備するにあたりどんな法的根拠があるのか、ということ。これについて、準備書面には、「設置できる。なぜなら河川区域だから」と、全く違うことが書いてある。法律家として全く分からない。説明を。」と詰め寄りました。 

 今回も総勢15名が鎮座した被告席。その最前列で、江戸川区の代理人とともに対応する国の代理人は、実は弁護士ではなく、若き検事と判事。法務省や法務局・地方法務局の訟務部門に所属し、国の代理人として訴訟活動を。しかし、冒頭から、倉地真寿美裁判長が問いかけたり、水を向けることに対し、キョトンとした表情を見せ、左右、後ろに陣取る人たちに回答をいちいち確認。なので、沈黙時間のあること、あること。そして、口にするのは、小声の早口で「書面のとおり」。

 「国の代理人さん、準備書面、書いてる? 事前に読んでる? 内容、わかってる?」 傍聴していた83人の方々、みなさんそう思ったのでは?

 先の小島弁護士の質問にも同様の反応を見せ、「誰が聞いてもわかるでしょ、あなた」と突っ込まれ、裁判長も「(河川区域は)工事が終わってからですよね?」との整理を。

 つまり、河川管理者となるのは、河川区域になってから。であるならば、冒頭の国の主張は何の説得力もないものに。 

 小島弁護士の「河川法は法的権原にはならない」との指摘に対し、窮地に立たされた国側は、最終的には「河川法上の工事実施の権原を主張するものではない」と、やはり小声・早口で、自らの主張を撤回することとなりました。 

 さらに、工事実施について、「今回、区画整理法100条の2を持ち出しているが、これまでのように同法80条を主張することはないのか?」との同弁護士の問いに、しばらく時間が経ってから、「現時点では、ない」と回答するに至りました。こちらも二転三転・・。 

 次回期日は、8月7日(金) 101号大法廷にて午後3時開廷 です。 

 それにしても、国の代理人を、裁判官や検察官が担う制度、こんなことがあっていいの? 市民には何とも理解しがたいことです。

 ところで、2011年11月に初めて提起した「江戸川区スーパー堤防取消訴訟」を最初に指揮した定塚誠さん。まともな口頭弁論をさせない指揮をとり、「裁判官の衣を着た行政マン」との異名をとりましたが、このたび、法務省に14年ぶりに復活した訟務局局長に就任。国が争う訴訟で、国の勝訴のために活躍されるそう。

土地区画整理法

(使用収益の停止)

第百条  施行者は、換地処分を行う前において、土地の区画形質の変更若しくは公共施設の新設若しくは変更に係る工事のため必要がある場合又は換地計画に基き換地処分を行うため必要がある場合においては、換地計画において換地を定めないこととされる宅地の所有者又は換地について権利の目的となるべき宅地若しくはその部分を定めないこととされる権利を有する者に対して、期日を定めて、その期日からその宅地又はその部分について使用し、又は収益することを停止させることができる。この場合においては、その期日の相当期間前に、その旨をこれらの者に通知しなければならない。

 前項の規定により宅地又はその部分について使用し、又は収益することが停止された場合においては、当該宅地又はその部分について権原に基き使用し、又は収益することができる者は、同項の期日から第百三条第四項の公告がある日まで、当該宅地又はその部分について使用し、又は収益することができない。 

(土地の使用等)

第八十条  第九十八条第一項の規定により仮換地若しくは仮換地について仮に権利の目的となるべき宅地若しくはその部分を指定した場合又は第百条第一項の規定により従前の宅地若しくはその部分について使用し、若しくは収益することを停止させた場合において、それらの処分に因り使用し、又は収益することができる者のなくなつた従前の宅地又はその部分については、施行者又はその命じた者若しくは委任した者は、その宅地の所有者及び占有者の同意を得ることなく、土地区画整理事業の工事を行うことができる。