堤防強化工法へようやく回帰? ~ さて、スーパー堤防は?

  19日、国交省関東地方整備局は、決壊した鬼怒川について、新たに建設する堤防には、越水・浸透対策として、遮水シートやコンクリートブロック、鋼矢板を使うことを第3回鬼怒川堤防調査委員会にて確認しました。高さもこれまでより1.4mかさ上げして5.4mにし、幅も川側へ1.5倍拡げるとのこと。排水設備も設けられるこの工法は、効果が確認されながらも、いつの間にかお蔵入りとなっていた「フロンティア堤防」に近づけるもの? 資料はこちらから。

 国交省は、1997年(平成9年)を初年度とする第9次治水事業5箇年計画において、「越水に対し耐久性が高く破堤しにくいフロンティア堤防」に新たに着手することとしていました。そして、2009年にこのHPでお伝えした通り、地方の一級河川にてその整備が始まっていました。それがなぜ継続されなかったのか。 

 それは、国交省が「ダム」建設を重んじたから。

 その背景には、「ダム」建設反対を主張する市民から上がった「堤防を強化するならダムは不要」との声を受け、国として、ならば「ダム」建設優先との判断をし、先述の堤防設計指針を、「技術が確立していない」として、STOPしてしまったという経緯があります。

  そして、鬼怒川決壊を招いたことでようやく、13年ぶりに、当初の堤防整備設計へと回帰した格好です。今回の堤防決壊は、人智を超える自然の力というよりも、この失われた10年によって、もたらされたものと言えます。 

 こうした中で、整備率は極めて低く、数々の問題を抱えながらも、唯一無二の「超過洪水対策」との折り紙をなぜか付けられ、首都圏・大阪圏の5河川を対象に生き続けているのが「スーパー堤防(高規格堤防)」です。 

 しかし、現在国が江戸川区北小岩に建設中のスーパー堤防について、20133月につくられた「江戸川堤防整備推進方策検討業務報告書」の北小岩一丁目高規格堤防の費用便益比計算報告書」によれば、当該地区では、従前の堤防であっても、1/200の洪水に対し、過去に起きた8つの洪水パターンすべてにおいて破堤せず、被害額はゼロ、と報告されていました。つまり、スーパー堤防にしなくても、極めて高い安全性が確保されていたということです。一方では、鬼怒川のように、1/10の洪水対策すらできていない河川もあるというのに、通常整備よりもはるかに高額な税を投入して、なぜこの地区をさらにスーパー堤防にしなければならないのか。同報告書によれば、スーパー堤防にすれば、1/1000の洪水にも対応できるとのことですが、他に優先すべき堤防整備箇所がたくさんあるのでは?

15日、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画関係都県会議」が開かれ、同日から「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(変更原案)に対する意見募集が始まりました。今回の主な変更点は、「霞ケ浦導水事業」を計画に位置づけていること(P61)、そして、「高規格堤防」についても、北小岩当該地区が追記されていること(P59)。ここには、ご丁寧に、「今後の状況の変化等により必要に応じて本表に示していない場所においても施行することがある」とも記されました。いずれも民主党政権下、一旦凍結されながら自公政権復活後に再開され、裁判に発展しているなど、事業の効果、必要性において、根本的な問題を抱える公共事業です。意見書提出は1113日まで。詳細はこちらから。